経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

公共事業はマネーストックを増やす

「ねえねえ」
「なに?」
「この前ツイッター見てたら、公共事業マネーストックを増やすかどうかで言い争ってる人たちがいたんだけど」
「へぇ」
「実際、どうなの?」
「そうだねぇ……。マネーストックというのは我々が使えるお金の総額のことだけど、何がお金を増やして、何がお金を減らすのかっていうのは、日銀が公表してる統計データを見ればある程度わかるよ」
「そうなの?どんな統計データ?」
「マネタリーサーベイという統計なんだけどね。日銀と全ての銀行*1のバランスシートを合算して調整したものをマネタリーサーベイ総括表と言うんだ」
「ふーん。金融機関全体のバランスシートってこと?」
「そんな感じだね。例えば2016年9月末時点の総括表はこんな形をしているよ」

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「ほほぅ…」
「バランスシートだから、資産の合計と負債の合計は一致しているよね」
「そうね」
「そして、黄色く色をつけた部分はM3というマネーストックになっているんだ」
「えっ、金融機関のバランスシートを合算しただけなんでしょ」
「そうだよ」
「うーん、預金通貨は分かるけど、なんで現金通貨がここにあるの?」
「日銀の負債にある発行銀行券から、銀行の資産にある手持ち現金を差し引くと、現金通貨が残るんだよ*2
「ふーん。良く分からないけど、そうなのね」
「うん。マネーストックが負債側にあって、資産と負債がバランスしている。ということは、この表からマネーストックの増減要因が分かるでしょ」
「…と言うと?」
「資産側の項目の金額が増えれば、マネーストックの増加要因になる。逆に、負債側の『その他負債(純)』が増えれば、マネーストックの減少要因になる」
「なるほど」
「資産側に、政府向け信用っていう項目があるでしょ」
「うん。信用ってどういう意味?」
「貸し付けって意味だと思っていいよ」
「金融機関から政府への貸し付けってことね」
「そうそう。国債なんかが含まれるよ」
「ふむ。(純)っていうのは?」
「逆に、政府から金融機関への貸し付けも少しあるからね。それを差し引いた純額ってことだよ」
「ふむふむ」
「この政府向け信用の増減に着目して、マネーストックの増減との関係を見てみよう」
「ほう」
「年度ごとのマネーストックの増加額と、政府向け信用の増加額をグラフにするとこうなるよ」

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「ふーむ……」
「だいたい同じような動きになってるよね」
「そうね……」
「この期間、政府向け信用の増加がそのまま、マネーストックの増加になってる感じでしょ」
「確かに……。でも偶然じゃない?」
「まぁ、他の項目が全部一定で増減が無いわけじゃないけどね。とにかく、政府向け信用の増減がマネーストックの増減要因になっていることは間違いないでしょ」
「それはそうね。でも、どうして政府向けの貸し付けが増えたの?」
「政府が赤字だからだよ」
「えっ?」
「最近の政府の財政は、財源が100兆円ぐらい、支出が130兆円ぐらいで、毎年30兆円の赤字を出してるんだ*3
「へー!」
「足りない30兆円は、借りるしかないよね」
「それが、金融機関の政府向け信用ってこと?」
「半分正解。政府が借りる相手は、金融機関か公衆かだ。金融機関から借りれば、金融機関の政府向け信用が増えることになる」
「ふむふむ。公衆って何?」
「政府や金融機関以外の経済主体のことだよ。具体的には、一般の企業や家計、地方自治体なんかだね*4
「ふむふむ。政府はそれぞれから、どれぐらい借りてるの?」
「平均すると、金融機関からは毎年20兆円ほど借りているね」
「ってことは、公衆からは平均して毎年10兆円ぐらい借りてるってことね」
「そうなるね。そして、この金融機関から借りた20兆円がマネーストックを増やしている」
「政府向けの信用だからね」
「そう。これでやっと本題に入れるんだけど」
「長かったわね」
「政府が公共事業をやると、政府の支出が増えて、財源が不足するよね」
「そうね」
「その不足分の3分の2程度を金融機関から借りるとすれば、その借りた分だけマネーストックは増えることになる」
「確かに。残りの3分の1は公衆から借りるんでしょ。これはマネーストックを増やさないの?」
「増やさないよ。公衆から政府に貸したお金が公衆に戻ってくるだけだから、プラスマイナス0だ」
「ふむ」
「結論としては、公共事業をやればマネーストックが増えるってこと」
「でもさぁ、政府がやらなくても民間の企業が同じことをしてたとすれば、公共事業をやってもやらなくても同じだったってことにならない?」
「そうなんだけどね。公共事業ってのは、民間企業が勝手にやらないことをやるんだよ」
「と言うと?」
「たとえば、道路が無い地域に道路を作るという工事を、民間企業が勝手にやると思う?」
「うーん、お金を払ってくれる人が居ないか……」
「そうでしょ。だから、公共事業をやればやっただけ、マネーストックを増やすことが出来るよ」
「ふむ」
「あと、今話したのは政府が公共事業をやった時の直接的な影響の話だけだからね。二次的な影響でマネーストックがさらに増えることもあり得るよ」
「二次的な影響って?」
「たとえば、リニアモーターカー公共事業の一環で作ったとしたら、それによって経済活動が活発になって、民間企業への貸し付けが増えることは十分に考えられるでしょ」
「ふーむ、なるほどね。良く分かりました」

*1:より正しくは預金取扱機関です。国内銀行、在日外銀、農林水産金融機関、中小企業金融機関等、合同運用信託が含まれます。

*2:日銀当座預金については、日銀BSの負債側と銀行BSの資産側に同額があり相殺されます。また、流通貨幣(硬貨)については、日銀の資金循環統計やマネタリーサーベイでは日銀券と同様に日銀の負債として扱われます。

*3:政府の歳入と歳出は同額ですが、借金やその返済を除いた純粋な財源の額と支出の額は、財務省サイトの「国の財務書類」で見ることができます。

*4:マネタリーサーベイ総括表の「その他金融機関」は公衆には含まれません。(12月2日修正)