経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

本当は簡単な「マネーストック増減の仕組み」

「ねぇ」

「なに?」

「この前、金融機関が政府にお金を貸すとマネーストックが増えるって言ってたでしょ」

「言ったね」

「他にはどういう時に増えるの?」

「そうだねぇ。マネーストック*1がどんな時に増えて、どんな時に減るのかというのは、難しそうに思えるけど実は簡単なんだよ」

「そうなの?」

「ある図を見ながら考えれば簡単に理解できるよ」

「へー。どんな図?」

「3つの経済主体の図なんだけどね」

「経済主体って?」

「経済活動を行う単位を経済主体というよ。教科書では、家計、企業、政府の3つを経済主体とすることが多いね」

「家計、企業、政府……あっ、その3つが描かれた図、教科書で見たことあるかも!」

「うん、僕が言ってるのはその図じゃないんだよ。教科書には必ずと言っていいほどアレが載ってるけどね」

「じゃあ、どんな図なの?」

「図を見せる前に、まず言葉の定義をしておこう。『通貨』という言葉をきちんと定義しておかないと話が進まないんだ」

「通貨?お金ってことでしょ?」

「そうだけど、お金が全て通貨というわけじゃないよ。通貨というのは、マネーストックを構成するお金のことだよ」

「ふーん?良く分からないけど」

「僕やマイのサイフに入ってるお札や硬貨はもちろん通貨だ。マイの銀行口座に入ってる預金も通貨だよ」

「それは分かるわ。逆に、何が通貨じゃないのよ」

「金融機関が持っている現金は、マネーストックに含まれないから通貨じゃないよ」

「へー」

「あと、日銀当座預金などの金融機関が持っている預金も通貨じゃないし、政府のサイフ、つまり政府預金に入っているお金も通貨じゃない」

「ふむふむ」

マネーストックの定義は日銀のサイトで説明されてるから、それを見れば何が通貨なのかも分かるよ」

「うーん、だいたい分かったからいいわ」

「うん。マネーストックを構成するお金が通貨だということは、通貨を全て合計するとマネーストックになるよね」

「そうね」

「ここまで分かったら、3つの経済主体の図を見せよう。こんな図だよ」

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「ふーん……。教科書に載ってた図と似てるけど、ちょっと違うわね」

「教科書の図はいったん忘れて」

「ふむ……。公衆ってなに?」

「通貨を保有している経済主体、つまり通貨保有主体のことを公衆と言うよ。具体的には家計や企業、あと地方自治体なんかだね」

「通貨を持ってるのが公衆。……ってことは、金融機関と政府は通貨を持ってないってこと?」

「その通り。通貨を持ってるのは公衆だけだ」

「通貨を持ってるから通貨保有主体なのね」

「うん。そして重要なことは、公衆の中で通貨をやりとりしても、通貨は増えたり減ったりしないということだ」

「うーん、でも、企業がモノを作って利益を乗せて売れば、お金が増えるじゃない?」

「この前も話したけど、モノを作るとお金が増えるというのは誤解だよ。利益を乗せているとしても、誰かの通貨が別の誰かのところに移動するだけで、増えたりはしない」

「そうなのね……。公衆の中で通貨が増えないとすると……他から受け取らないと増えないってこと?」

「その通り。他の経済主体から通貨を受け取れば通貨が増えるし、他の経済主体に通貨を渡せば通貨が減る、という単純な話だよ」

「えっ、でも渡すだけだったら、増えたり減ったりしないんじゃないの?」

「公衆が持っているのが通貨だから、政府とか金融機関に渡したら通貨ではなくなるんだよ」

「どういうこと?」

「税金として政府に通貨を渡した場合、そのお金は政府口座に入る。さっき言ったように、政府口座に入っているお金は通貨ではない。通貨だったお金が通貨ではないお金になったってことだよ」

「ふーん、そうなんだ……」

「逆に、政府がお金を使う場合は、政府口座に入っている通貨じゃないお金が、公衆の手に渡って通貨になるわけだ」

「なるほど……。だから、納税するとマネーストックが減って、政府がお金を使うとマネーストックが増えるってことね」

「その通り」

「じゃあ、金融機関に通貨を渡した場合も、マネーストックは減るんだね」

「そうそう」

「通貨だったお金が、通貨じゃないお金になるわけね?」

「うーん、それは半分正解かな」

「なんで半分?」

「たとえば、保険会社に掛け金を払ったり、証券会社にお金を預けた場合はその通り。通貨だったお金が通貨じゃないお金になる」

「うん」

「しかし、銀行にお金を返済した場合には、その通貨は消えて無くなる。通貨が減ることに変わりはないんだけどね」

「通貨が消えて無くなる……?」

「そもそも通貨というものは、銀行が発行して作ったものだからね。銀行が作った通貨が銀行に戻されれば、消えて無くなるんだよ」

「銀行が通貨を発行して作ってるの?どうやって?」

「銀行がお金を貸す時に、預金通帳と銀行の帳簿に数字を打ち込むことで預金通貨を作っているんだよ。これを信用創造*2というよ」

「ほう……」

「お金が銀行に返済される時には、預金通帳と帳簿の数字を減らすんだ。この時、通貨が消滅する」

「ふーむ……。預金通貨って、本当に帳簿上の単なる数字なのね……」

「そうだよ」

「そうすると、銀行が通貨を作って公衆に渡せば通貨が増えるし、銀行が公衆から通貨を受け取って消しちゃえば通貨が減るってことね」

「そういうこと」

「じゃあ、銀行に現金を持って行って預金した時も、通貨が減るの?」

「いや、現金を預金した時は、現金通貨が預金通貨に変わるから、通貨は減らないよ。現金通貨にしろ預金通貨にしろ、保有しているのは公衆だからね」

「そっか。じゃあ、現金を引き出しても預金しても、通貨は増減しないのね」

「その通り。現金を預金する時、通貨を渡してはいないんだ」

「ふーむ……。今までの話をまとめると……?」

「通貨を保有しているのは通貨保有主体、つまり公衆だけ。公衆が通貨を金融機関や政府から受け取るとマネーストックが増えるし、公衆が通貨を金融機関や政府に渡せばマネーストックが減る」

「それだけ?」

「それだけだね。簡単な話でしょ」

「そうすると、金融機関が公衆に通貨を貸し付ければマネーストックが増えて、返済があれば減る」

「そう」

「政府が支出して公衆に通貨を支払えばマネーストックが増えて、公衆から税金とかで通貨を受け取れば減る、と」

「その通り」

「分かっちゃえば簡単ね」

「そうでしょ。さっきの図をもう少し詳しく描くとこうなるよ」

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「ふむふむ、分かりやすいわね。こういう図を教科書で見たことが無いんだけど、どうしてかしら」

「どうしてだろうね。金融機関がお金を作っているということを、あまり知られたくない人たちがいるんじゃないかな」

「ふーむ……」

*1:ここではM3について考えます。

*2:信用創造を英語でcredit creationと言いますが、creditには貸方に記入するという意味があります。credit creationという言葉は、銀行帳簿の貸方に記入することにより通貨を作るという意味だと捉えてもいいかも知れません。