経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

転売行為は付加価値を生まない

はじめに

結論から言いますが、転売行為によって付加価値は生まれません。

当たり前だと言う方が多いだろうとは思うのですが、「転売ヤーは高付加価値なサービスを提供(している)」と仰る経済学者の方もいらっしゃいますので、面倒ですが反論しなければなりません。

 

 

前回と同様、ここで問題とする転売行為は、転売ヤーが居なくても消費者が商品を入手できる状況があるにも関わらず、消費者と販売者*1の間に転売ヤーが割り込んで利益を抜く行為です。

この行為が詐欺や泥棒と同様の「悪いこと」だということを説明していきます。

たとえ経済学者であっても、詐欺や泥棒を「高付加価値なビジネスだ」とは言わないでしょう。

 

「誰が買おうが自由だ」という誤解

転売行為を正当化する人は、「売られているものを誰が買おうが自由だ」と考えているフシがあります。

しかし実際にはそうではありません。

販売者は誰に売るかを選ぶことが出来ます。

たとえば、店の中で大声を上げて騒ぐなどして他のお客さんに迷惑をかける人がいたら、その人を店から追い出し、販売を拒否することが出来ます。

恨みのある相手だから売らないということも出来ますし、見た目が不潔だから売らないということも可能です。

売買契約を結ぶかどうかは売る側にとっても自由なのであり、客が来たら誰にでも売らなきゃいけないわけではありません。

「誰が買おうが自由」なのではなく、「誰が買いたいと言っても自由だが、売る側が売るかどうかも自由」なのです。

 

販売者は転売ヤーには売りたくない

販売者は人気商品を転売ヤーに売りたいでしょうか。*2

そんなわけないですよね。

普通に考えれば転売ヤーに売りたいわけがありません。*3

この点に関しては、さすがに経済学者の方々も気付いているかと思います。*4

なぜ販売者が転売ヤーに売りたくないのか、その理由をいくつか挙げておきましょう。

  • 人気商品を既存の顧客・得意客に売って喜ばせた方が、販売者の将来的な利益につながる
  • 販売者は消費目的の新規客に人気商品を売って顧客として取り込みたい
  • 転売ヤーは人気商品のみを転売目的で確保しようとするため、販売者にとっては利益をもたらす顧客とは言えない*5
  • 販売者が人気商品を転売ヤーに売れば消費者に余計な負担を強いることになるため、関連商品の売り上げが落ちる*6

 

転売ヤーには販売を拒否できる

ここまでで、販売者は売る相手を選べる(=売りたくない相手には販売を拒否できる)ことと、販売者は転売ヤーには売りたくない(=販売者にとって転売ヤーは売りたくない相手である)ことが分かりました。

つまり、販売者は転売ヤーに対しては販売を拒否できるということです。

前回の記事では転売ロボットが商品を買いに来ても店側には拒否する権利が無いと仮定しましたが、拒否する権利はあるのです。

 

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まあ普通に考えて、見た目で転売ロボットだと分かれば売りませんよね。

人間の客でも「私は転売ヤーです。転売目的で買いに来ました」と自己紹介されれば売らないでしょう。

実際には、転売ヤーは「私は普通の消費者です。消費目的で買いに来ました」という風な顔をして買いに来るわけです。

転売ヤーは販売店を騙している

ここに欺瞞があります。

良く考えてみましょう。

 

転売ヤーに売らないために

販売者は転売ヤーには売りたくありませんから、売らないように対策します。

具体的にはどうするか。

その商品の転売行為が明確に違法とされていない場合、出来ることは多くありません。

「転売禁止」「転売を目的とした購入は禁止」ということを張り紙などで周知するぐらいのことです。

これは、「購入した商品を転売しないこと」「購入の目的が転売ではなく消費であること」を条件としての売買契約であると解釈できます。

つまり、転売目的での購入はこの契約条件に違反しているのであり、転売を実行した時点で債務不履行(契約によって約束した義務を果たさないこと)となります。

転売ヤーは販売者を騙して売買契約を結んでいるのであって、これは「悪いこと」なのです。

契約の相手方が契約条件に違反すれば損賠賠償の請求が可能ですが、仮に売買契約書を書面で作っていたとしても、どの客が転売を実行したかを販売者が特定して賠償を請求することは実質的に不可能です。

そこにつけこんで転売ヤーは転売行為という「悪いこと」を繰り返しているわけです。

 

転売で利益が出る仕組み

転売は詐欺と同様の「悪いこと」であり、利益が出ても付加価値が生まれたと見なすことは出来ません。

これだけで記事を終えてもいいのですが、転売で利益が出る仕組みをもう少し詳しく考えてみましょう。

販売者が人気商品を消費者に販売するという行為は、次の2つに分けて考えることが可能です。

  1. 商品を定価で購入できる権利(定価購入権)の配布*7
  2. 定価購入権を持っている消費者への定価での販売

定価購入権は先着順あるいはくじ引きなどで無料で配布されます。

消費者が先着順で商品を買うことが出来た場合、定価購入権の配布を受けると同時にその権利を行使し、定価で商品を購入したのだと解釈できます。

転売という行為の本質は、この定価購入権を無償で手に入れて有償で消費者に売るということです。*8

(これと同時に、販売者からの定価での購入を代行して商品を消費者に引き渡します。)

ここで、販売者は人気商品を転売ヤーには売りたくないということを思い出しましょう。

定価購入権で言えば、販売者は消費者だけに配布したいのであり、転売ヤーには配布したくないのです。

そしてもちろん、販売者は転売ヤーが定価購入権の配布を受けることを禁止できます。

この禁止を破って転売ヤーが列に並んだりくじ引きに参加したりして定価購入権を得ることは明確に「悪いこと」です。

「悪いこと」をして無償で手に入れた定価購入権を販売して利益を得ることは、盗んだものを売って利益を得ることと本質的には同じです。

盗品を売って利益を得た時に「付加価値が生まれた」とは言わないでしょう。

 

転売と営利誘拐の類似性

禁止を破って転売ヤーが定価購入権の配布を受けた時、この転売ヤーは販売者から定価購入権を騙し取ったと言うことも出来ますし、本来配布を受けたはずの消費者から奪い取ったと言うことも出来ます。

後者の考え方で言えば、転売ヤーは定価購入権を消費者から不当に奪い取っておいて、「返して欲しければ金を払え」と脅迫して金を取っているわけです。

人気商品の定価購入権はどうしても欲しい消費者にとって大切なものですから、仕方なく金銭を支払って取り戻しているのです。

これは構造としては営利誘拐(身代金目的の誘拐)と同じです。*9

大切なものを奪われた人と金を払って取り戻す人とが営利誘拐の場合は同一ですが、転売の場合は別の人なのでこの構造が見えにくくなっています。

全体としてみれば、消費者が転売ヤーに定価購入権を不当に奪われ、それを消費者が取り戻す際に仕方なく金銭を支払っているのです。*10

営利誘拐が成功して利益を得た時に、「付加価値が生まれた」とは言わないでしょう。

同様に、転売行為で利益を得ても「付加価値が生まれた」とは言えません。*11

 

おわりに

今回の記事では、転売行為が「悪いこと」だということ、「悪いこと」をして利益を得ても付加価値が生まれたとは言えないことを論じました。

しかし(少なくとも一部の)経済学者の方は、転売行為によって付加価値が生まれると主張しています。

これは「付加価値」という言葉の定義の問題なのかも知れません。

経済学では「利益が出たということは付加価値が生まれたに違いない」というように、利益と付加価値とをほとんど同一視しているように思えます。

この記事で見たように、利益が出ることと付加価値が生まれることは同じではありません。

本当になんらかの価値が付加されたのかどうかを良く考える必要があります。

当たり前の話ですが、明確に違法な行為であるかどうかにかかわらず、「悪いこと(他者に迷惑をかける行為)」をして利益を得た場合には「付加価値が生まれた」などとは言えないのです。

 

こちらもどうぞ。

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*1:ここで言う販売者は直接的には小売り業者のことを指しますが、販売者の意図にはメーカー側の意図(転売ヤーには売って欲しくない、この価格で売ってほしい等)も含まれていることに注意してください。この記事で販売者の意図を考える時には、メーカーを含めた「販売側」の意図を考えています。

*2:在庫を抱えて困っているような商品なら誰にでも売るでしょう。

*3:誰が買っても構わないと販売者が考えているのであれば、音楽業界などが転売禁止キャンペーンをやっていることの説明がつきません。

*4:転売ヤーに売りたくないなら自分たちで工夫して対策すれば良いのだ、というような経済学者の意見がありました。転売ヤーに売りたくないこと自体は認識しているということです。

*5:転売ヤーが居ようが居まいが人気商品は売り切れるので、売り上げは変わりません。

*6:たとえば、消費者がコンサートのチケットを転売ヤーから高額で買う場合、差額(プレミアム)の分だけグッズ等を買う予算が減ります。また、プレステ5のようなゲーム機の場合は関連商品(ソフト)の販売で利益を得ることを主眼にしているため、ハードの転売行為によって消費者が負担を強いられたりハードを買い控えたりすると、メーカー側は大きな損失を被ります。よって、メーカーは転売ヤーには売らないように販売者に依頼します。転売ヤーには売らないということが、メーカーを含めた「販売側」の意図なのです。

*7:もちろん、商品の数量と同じ数量の定価購入権を配布します。

*8:実際、チケットの転売ではこれと全く同じことが行われる場合があります。チケットを定価で買う権利だけが転売され、それを購入した消費者は権利を行使して定価でチケットを買うのです。

*9:「悪いこと」をした相手に簡単に金を払って解決しようとすることが褒められた行為ではない点も、営利誘拐と転売行為は似ています。簡単に金を払えば相手が「悪いこと」を繰り返すモチベーションになってしまうのです。

*10:金を払って定価購入権を取り戻すのは予算に余裕のある消費者です。経済的に余裕があるとは言え、本来支払う必要の無い金銭を消費者が取られていることに変わりはありません。営利誘拐の場合も、多額の身代金を払うことが出来る経済的に余裕のある人がターゲットとなり、本来支払う必要の無い金銭を脅し取られます。

*11:経済学者は「その商品に最も高い価値を見いだす人に売れば経済厚生が最大化する」と主張して転売行為を正当化しますが、これは「誘拐された人に最も高い価値を見いだし多額の金を出す人から身代金を取れば経済厚生が最大化する」と言っているのと同じです。