はじめに
前回の記事では、以下のような話をしました。
- 世の中の人は権威(政府など)を信じる人と疑う人の二種類に分かれる
- 特にワクチンというトピックに関して、権威側の主張(ワクチンは安全で高い効果がある)を信じる人=ワク推と、それを疑う人=反ワクがいる
この記事に対して、酔狂人さん(id:suikyojin)から以下のような趣旨のコメントを頂きました。
人間は盲信しやすい。
ワク推はワク推(=権威側)の見解を盲信しているだけかも知れないが、反ワクも反ワクの見解を盲信しているだけだ。
盲信する方向性が違うだけで、どちらも同じことだろう。
これは確かにその通り。
反ワク側の見解を精査もせずにただ盲信しているだけの人はたくさん居ます。
ワク推側も同様ですから、そういう意味では、ワク推も反ワクも大して変わらないと言えるでしょう。
私が前回の記事でワク推=盲信する人、反ワク=疑う人という風に書いたのは、少し雑すぎるまとめ方だったかも知れません。
より正確に言うなら、ワク推=ワク推教団とその信者、反ワク=反ワク教団とその信者、ということになるでしょう。*1
このように書くと、「酔狂人さんの言う通り、どっちもどっちだな」と思いますよね。
しかし、私は「どっちもどっち」とは考えていないのです。
邪馬台国論争
私の問題意識を説明するため、邪馬台国があった場所についての論争の話をして、ワクチン論争と比較しましょう。
邪馬台国は九州にあったとする説と、近畿にあったとする説がありますよね。*2
九州説を唱える学者達がいて、それを信じる人がいます。
また、近畿説を唱える学者達がいて、それを信じる人がいます。
この構図だけを見ると、ワクチン論争と同じであるように見えます。
しかし、ワクチン論争と邪馬台国論争はまったく性質が異なるのです。
どう違うのか?
邪馬台国があったのは大昔のことであり、真実は私たちの手から遠いところにあります。
現代まで残された手かがりはわずかであり、どちらの説が正しいのかは本当に分かりません。
また、双方の学者は別に金銭的な利益を得るために自説を押し通そうとしているわけではなく、誠実に真実を追究していると期待できます。
人々の大半が近畿説を信じたら大儲けする企業があって、近畿説の学者はその企業から金銭的な支援を受けている……などということは考えにくいですよね。
ワクチン論争
これに対し、ワクチンの大規模接種キャンペーンをやっているのは今であり、ごく近い過去のことです。
世界中の人々に何度も接種しているのですから、真実は私たちの手近なところにあります。*3
もしも関係者の全員が誠実に行動するなら、私たちはたやすく真実にたどり着けるでしょう。
具体的には、製薬企業は出すべきデータを隠さずにきちんと出し、厚労省などの規制当局は取るべきデータをきちんと取って手心を加えずに公表し、マスコミはスポンサーに忖度せず報道すべきことをきちんと報道していれば、私たちは速やかに真実を知ることができるはずです。
あるいは、これらのことが現実に誠実に行われていると仮定した場合、権威側にいない学者や専門家がこれを真摯に受け止めて誠実に検証すれば、それが真実だと皆が納得するはずです。
論争など起きないか、起きても争点はごく小さなものになるでしょう。
ところが実際にはそうなっていません。
ワク推教団は「ワクチンは安全で効果的だ。打つべき」と言っていて、反ワク教団は「ワクチンは安全でも効果的でもない。打ってはいけない」と言っています。
正反対ですよね。
これは、ワク推教団と反ワク教団の双方が誠実に行動しているのではなく、どちらか一方は不誠実な行動をしているということです。
不誠実な行動とは、私的な利益のため、つまり金儲けのために人々にウソをついて騙しているということです。
ワク推教団か反ワク教団か、どちらかが大がかりなウソをついているのです。
ウソつきはどっちだ
当然のことながら、ワク推教団は反ワク教団こそが大ウソつきであり、金儲け目的で人々を欺いていると糾弾しています。
逆に、反ワク教団はワク推教団こそが大ウソつきであり、金儲け目的で人々を欺いていると糾弾しているわけです。
これは論争とは言い難いでしょう。
なんと呼べば良いでしょうね。
たとえて言うなら、殺人事件の容疑者が二人いて、真犯人はどちらか一方だけという状況で、お互いにアイツが犯人だと主張しているようなものです。
一方は潔白で、真実を主張しています。
もう一方は真犯人で、大ウソをついています。
この二人の容疑者は論争をしているのではありませんよね。
言ってみれば、これは「ウソつきはどっちだゲーム」なのです。
ワク推教団と反ワク教団は論争をしていると言うより、ウソつきはどっちだゲームをしているわけです。*4
私が読者に伝えたいことは、今行われているのがウソつきはどっちだゲームであることを認識した上で、ワク推教団側(つまり権威側)がウソをついている可能性もある、という視点を持って考えてみて欲しいということです。
思考停止で「権威側が正しいに決まってる」などとは考えないで欲しいのです。
私の問題意識
私の問題意識を整理しておきます。
- いま世界で行われているのはワク推と反ワクの論争ではなく、ウソつきはどっちだゲームだ
- 「これからウソつきはどっちだゲームを開催します」という告知は無かった
- 私たちにはまず最初に「ワク推教団が正しい」と権威側から(マスコミや専門家を通じて)教えられたのであり、2つの選択肢を並列に提示されたのではなかった
- 私たちは普通、政府や医師などの権威・専門家は正しいと無意識のうちに信じていて、基本的に疑うことが無い
以上のような問題意識から、前回の記事で「権威を盲信していて大丈夫か?」と読者に問いかけたわけです。
ゲームの戦略を考える
ウソつきはどっちだゲームの内容を整理しましょう。
ワク推教団と反ワク教団は、どちらか一方が不誠実な行動をしていて、ウソをついて金儲けしています。
どちらがウソつき教団なのかは、私たち一般人には知らされません。
私たちは双方の主張を聞き、どちらの教団に入信するかをそれぞれが決めます。
教団側は、多くの信者を獲得した方が勝ちです。
一般人側は、入信した教団が不誠実なウソつき教団なら負け、誠実な教団なら勝ちです。
ここで、教団側としての戦略を考えてみましょう。
基本的には、どちらの教団も自説を支持するようなエビデンス(論文やデータ)を次々に出して、自説が正しいと主張します。
誠実な教団側は、誠実にエビデンスを出すでしょう。
ウソつき教団側は、データを扱う際にトリックを使ってウソをついたり、あるいは単純にデータをねつ造したりするでしょう。*5
次に、相手側の主張がいかに間違っているかを指摘して喧伝します。
誠実な教団側は、相手側の主張の矛盾点を見つけて指摘するなどして、ウソを暴こうとするでしょう。
ウソつき教団側としては、相手側がウソをついていないことを承知していますから、どうしても決めつけが多くなります。
「あいつらが言っていることはウソだ、デマだ、ねつ造論文だ」などと決めつけるわけです。*6
その他にも、ウソつき教団側は手段を選ばないでしょう。
豊富な資金力があれば、主要メディアやインフルエンサー、論文誌などを買収するかも知れません。
なぜ都合の悪いデータを無視するのか
ワク推教団の信者も反ワク教団の信者も、自説に都合のいいデータだけを盲信しがちで、都合の悪いデータは無視しがちですよね。
なぜそうなるかと言うと、どちらの教団も「あっちの教団はウソつきだ」と主張しているからです。
ウソつき教団が出してくるエビデンスはねつ造されていると考えるので、まともには受け取らないのです。
双方の信者が自説に都合のいいデータだけを盲信しがちな理由を酔狂人さんは「人間は盲信しやすいからだ」と言っています。
それもあるかも知れませんが、それ以上に「今やっているのは論争ではなくウソつきはどっちだゲームだから」という理由が大きいでしょう。
相手側の教団はウソつきだと思っていますから、相手側が出してくるエビデンスはウソだろうと考え、切り捨ててしまうのです。
ここまでが、酔狂人さんのコメントへの返信です。
ウソの見抜き方
どちらの教団がウソつきなのか、私たち一般人はどう判断すれば良いのでしょうか。
ワクチンは安全で効果があるとする論文は多数あります。
そして、ワクチンには効果が無い、あるいは逆効果になる、危険であるとする論文も多数あります。
ウソつきはどっちだゲームをやっている以上、こうなってしまうのです。
これらの論文を一般人である私たちが一つ一つ読み込んでウソかどうかを判定するのは、ちょっと無理な話ですよね。
こういう時、私たちはつい“専門家”を頼ろうとしてしまいがちです。
「結局のところ何が正しいんだよ。専門家さん、教えてくれよ」と。
ところが、“専門家”を名乗ってあなたに“真実”を教えてくれるその人物は、ウソつき教団に買収されてウソをついているかも知れないのです。*7
“専門家”を当てにすることは出来ません。
あなた自身の力を使って判断する必要があります。
どうすれば良いのか?
私がおすすめする方法は、どちらかの教団の論客が何かを主張しているのを見聞きしたら、その主張の真偽を見抜こうと努力するのではなく、その人の人間性を見抜こうと努力することです。*8
「この人は誠実な人間だろうか。本当に人々の健康状態を心配して行動しているのだろうか。それとも不誠実な人間で、金儲けのためにウソをついているのだろうか」と。
あなたはこれまでの人生で、あなたから金をだまし取ろうとする不誠実な人間に何度も遭遇してきたのではないでしょうか。
マルチ商法、デート商法、投資詐欺、寸借詐欺、リフォーム詐欺などなど。
お金を奪おうとしてくる不誠実な人間に対応した経験から、あなたは少なからず人を見る目を養っているはずです。
その目を使って判断しましょう。
「みんながそう言ってるからそうなんだろう」「テレビで言ってるからそうなんだろう」のような判断の仕方をしてはいけません。
それは思考停止です。
こちらもどうぞ。
*1:ワク推教団が、私が「権威」と呼んだものに当たります。
*2:もちろん他にも説がありますが、現時点で有力なのはこの2つです。
*3:今が邪馬台国が滅亡した直後の時代だとしたら、九州説と近畿説とで論争になることは考えられませんよね。邪馬台国に居たという人に話を聞きに行けば、どこにあったかはすぐ分かります。真実が手近なところにあるということです。
*4:九州説派と近畿説派はウソつきはどっちだゲームをしているわけではありませんよね。どちらもウソはついてませんし、自説が間違っているかも知れないと双方が理解しています。
*5:論文というものを信用できるのは、執筆者や査読者、編集者などの関係者がみな誠実に行動しているという前提があってのことです。ウソつきはどっちだゲームの中では、この前提そのものを疑う必要があります。
*6:誠実な教団側の主張に本物のデマが混じっていることもあるのですが。
*7:ウソつき側は手段を選ばないことを思い出してください。
*8:ただし、信者であろう論客には着目しないでください。誠実な人間がウソつき教団を盲信していることはあり得ますから。