経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

最上位の支配者は羊飼いのマインドを持っているか?

はじめに

今回の記事は、ある問いを立てて、読者の方にこの問いについて考えてもらうことが目的です。

表題の問い、つまり「最上位の支配者は羊飼いのマインドを持っているか?」という問いです。

おそらく意味が分からないでしょう。

まず、「羊飼いのマインド」と私が呼ぶものについて説明します。

次に、支配者という言葉を定義し、「最上位の支配者」が意味するところを説明します。

その上で、この問いについて少し考えてみましょう。

 

羊飼いのマインドとは

羊という動物はとても大人しい性質をしており、家畜として人間に利用されています。

羊は羊同士で殺し合ったり奪い合ったりせず、羊飼いや牧羊犬には従順に従いますよね。

羊飼いは羊のことを大切な家族とか仲間だとは思っておらず、自分の利益のために利用して良いものと見ています。*1

ですから、羊から毛を刈り取って自分の物にしたり、必要なら羊を殺して肉や皮を売ったりします。

羊飼いが一方的に羊を搾取しているわけですが、羊飼いは別に悪いことをしているとは思っていません。

羊飼いとして、やるべきことをやっているだけです。

 

羊飼いのマインド(と羊のマインド)

この羊飼いと同じように、他の人間(自分より下層の人間)のことを自分の利益のために利用して良いものと見ており、好きなだけ搾取して良いし、必要なら殺しても構わない、それを悪いことだとも思わない、そのような考え方のことを私は羊飼いのマインドと呼びます。

 

支配者とは

次に、支配者という言葉を定義します。

私が独自に定義するのですが、世間一般で使われている支配者という言葉の意味するところとそう変わらないはずです。

まず、支配者とは他者を支配する人のことです。

では、支配とは何か。

A氏がB氏に対して命令をするとB氏がその命令を実行する(B氏がA氏に命令することはできない)、という状態になっている時、A氏はB氏を支配していると言います。

この二者の関係において、A氏を支配者と呼び、B氏を被支配者と呼びます。

 

支配の構図

私たちにとって最も身近な支配関係は、上司と部下の関係でしょう。

上司は部下に命令して実行させることができますから、上司は部下を支配する支配者です。

ただし、上司と部下の関係では、勤務時間外では命令できませんし、また勤務時間内でも仕事と関係ないことは命令できませんよね。

また、多少命令に従わなかったとしても、即クビになったりはしません。

このように、命令できることが少なかったり、命令の強制力が弱かったりすることを、支配の強度が弱い、あるいは弱い支配だと言うことにします。

主人と奴隷の関係であれば、いつでもどんなことでも命令できますから、非常に強い支配だと言えるでしょう。

 

最上位の支配者とは

すでにお気付きでしょうが、上司もまたその上の上司の命令に従っています。

支配者にも、さらに上位の支配者がいるわけです。

支配関係はたいてい数珠つなぎになっていて、上位の支配者のそのまた上位の……と辿っていくことが出来ます。

ずっと辿っていけば、どこかで一番上に辿り着きますよね。

この一番上の支配者のことを、最上位の支配者と呼ぶことにします。

最上位の支配者は、他の誰の命令に従うこともなく、独立した自分の意思で支配を行うことが出来ます。

 

なぜ最上位の支配者にフォーカスするのか

私がなぜ“最上位の”支配者にフォーカスするのかを説明しましょう。

そのためには、ナチスドイツの話をするのが良いと思います。

ナチス時代のドイツでは、ヒトラーが最上位の支配者だったと考えて差し支えないでしょう。

ヒトラーに対して命令できる人は、国内にも国外にもいなかったと思われます。

彼がユダヤ人に対してしたことを考えれば、ヒトラーは(少なくともユダヤ人に対しては)羊飼いのマインドを持っていたのでしょう。

ユダヤ人を迫害し虐殺することを、悪いことだとは思っていなかったはずです。

では、彼より下位の支配者はどうでしょうか。

アドルフ・アイヒマン――彼は強制収容所へのユダヤ人の大量輸送を指揮した支配者であり、戦後の裁判で人道に対する罪や戦争犯罪の責任を問われて死刑になっています。

そうであれば、彼もヒトラーと同様に羊飼いのマインドを持っていそうですよね。

しかし、アイヒマンの裁判を傍聴した思想家のハンナ・アーレントによれば、彼は反ユダヤの思想を持たない凡庸な役人に過ぎず、単に上からの命令を生真面目にこなしただけだったそうです。*2

つまり、最上位でない支配者は上からの命令に従わざるを得ないのであり、中間の支配者のマインドがどうであれ、最上位の支配者と同じマインドで支配しているように振る舞う、ということです。

 

たとえば、貴方の上司が人情味のある優しい人間だったとしても、トップが冷酷なワンマン社長であれば貴方は冷酷に支配されます。

上司が社長に逆らってまで部下を守ろうとすれば、その上司はクビか降格になるでしょう。

その上司の裁量の範囲内でしか、貴方は優しくしてもらえません。

もしかしたら、飲みに連れて行ってくれてグチを聞いてくれるだけかも知れません。

 

私たちが住むこの世界で最上位にいる支配者が羊飼いのマインドを持っていれば、中間の支配者がどうであれ、私たちは羊のように扱われるということです。

だから私は、最上位の支配者にフォーカスして「羊飼いのマインドを持っているか?」と問うのです。

 

支配の原動力

ある人が他者からの命令に従うとすると、その理由は何でしょうか。

言い換えると、何が支配の原動力になっているのでしょうか。

三つ考えられます。

 

一つ目は暴力。

命令に従わなければ暴力を振るわれる場合、自分が相手より弱いなら、命令に従うのが普通でしょう。

これが最も根源的な支配の原動力です。

 

二つ目は損得。

相手の(主に金銭的な)損得をコントロールすることにより命令を実行させることが出来ます。

命令に従っている限りは毎月給料をあげますよ、命令に従わなければ給料を減らしたり、最悪クビにしますよ。

このように言われれば命令に従うでしょう。

これが上司と部下、雇用者と従業員の支配関係の原動力になります。

また、誰かを買収して何かを実行させる場合も、損得を原動力にして相手を一時的に支配していると言えます。

 

三つ目は洗脳。

相手を洗脳することができれば命令に従わせることが出来ます。

新興宗教が信者を洗脳するケースや、ブラック企業が新入社員を研修合宿で洗脳するケースなどが考えられます。*3

 

支配の原動力はこれら3つのいずれか、あるいはその組み合わせだと言えるでしょう。

たとえば、ホストが自分に惚れている女性客に命令して高額の支出をさせる場合、損得と洗脳が支配の原動力になっていると言えます。

 

誰が最上位の支配者なのか?

最上位の支配者とは、具体的に誰のことなのでしょうか。

独裁国の場合は分かりやすいですね。

前述の通り、ナチス時代のドイツならヒトラーが最上位の支配者です。

ヒトラーに命令できる人はいなかったでしょう。

今の北朝鮮なら金正恩が最上位の支配者です。

彼に対しては現状、アメリカの大統領であっても命令はできないでしょう。

 

では、私たちが住んでいる日本やアメリカなどの自由主義*4ではどうなっているのでしょう。

日本なら総理大臣が、アメリカなら大統領が最上位の支配者なのでしょうか。

あるいは、国民が最上位の支配者なのでしょうか?

 

国民は政府を支配しているか?

政府と国民の関係を考えてみましょう。

政府は国民に対して「税金を支払え」と命令して従わせていますから、国民を支配していると言えます。

ただし、無制限にどんな命令でも出来るわけではありませんから、これは弱い支配です。

ところで、国民主権という概念がありますよね。

日本国の主権者は国民だということになっています。

では、主権者とは何でしょうか。

仮に、国家における最上位の支配者のことを主権者と呼ぶのだとすれば、国民は主権者ではありません。

国民は政府から命令されて従うのですから、少なくとも国民が最上位ではありませんよね。

また、国民が政府に対して命令ができるとも考えられません。

国民は暴力を持っておらず*5、政府の損得をコントロールするだけの力もなく、政府を洗脳するだけの力もなく*6、したがって政府を命令に従わせるだけの力が国民にはありませんからね。

どうやら、主権者というのは“国家における最上位の支配者”とは別の概念であるようです。*7

 

独裁国と自由主義国の比較

ここで、独裁国と自由主義国で支配のありようがどのように違うのか比較してみましょう。

もちろん表題の問いがフォーカスしているのは私たちが住んでいるような自由主義国での話*8なのですが、あえて比較することで分かることがあるはずです。

 

まず、支配の原動力について。

独裁国では暴力が支配の原動力になることが多く、自由主義国では損得が支配の原動力になることが多いでしょう。

私たちが上司の命令に従うのは、リンチや拷問を恐れるからではなく、減給や解雇を恐れるからです。

 

次に、支配の強度について。

独裁国では支配の強度が強いことが多く、自由主義国では支配の強度が弱いことが多いでしょう。

私たちは上司から誰それを殺してこいと命令されることも、毎月上納金を納めろと命令されることもありませんし、夜中に電話で呼び出されることもありませ……いや、これは場合によってはありますね(笑)

政府による支配にしても、主な命令は税金を払えぐらいのもので、あとはルールを守れ程度のことです。*9

 

次に、支配の系統について。

独裁国では支配の系統が一つにつながっていて、系統を上に辿ると一人の独裁者に辿り着きます。

仮に独裁者の他に最上位の支配者と言える人がいたとしても、独裁者から命令されたら支配に服するしかありません。

暴力が原動力だからです。

それに対し自由主義国では、多数の支配系統が存在し得ます。

つまり、最上位の支配者も多数いるということです。

なぜそうなるか。

支配の強度が弱いからです。

大きな企業を実質的に支配している人も、政府には税金を支払わなければなりませんが、脱税や節税によって可能な限り払わないようにしていれば、この支配は無いも同然です。*10

自己資金で企業に100%(あるいは50%以上)出資している株主は、弱い支配ではありますが、最上位の支配者になり得るのです。

 

再び、誰が最上位の支配者なのか

前述の通り、国民は政府を支配できません。*11

しかし、大きな資金力を持った企業であれば、政府の中の役人を何人か、弱く支配することは可能でしょう。

支配の主な原動力が損得のコントロールだからです。

大きな資金力があれば、命令に従う役人に利益を与えることは可能ですよね。

つまり、ある業界を監督する省庁の支配系統を上に辿っていくと、その業界の企業に辿り着くようなルートがあり得るということです。

このような状況では、総理大臣や大統領が最上位の支配者だとはとても言えません。

 

資本主義社会においては、資金力の大きさ(資本の大きさ)が、そのまま力の大きさになります。

資金力があればあるほど、損得のコントロールによって多くの人や企業を支配できるからです。

つまり、自由主義国において最上位の支配者となれるのは、巨大な資金力を持った資本家です。

 

そろそろ具体的な名前を挙げましょう。

マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏は、最上位の支配者の一人だと言っていいでしょう。

彼は自己資金で(財団を通じて)様々な企業に出資していて、それらの企業を支配しています。

支配と言っても、その企業が何をするのかをある程度命令できるという弱い支配です。

ただ、弱い支配とは言っても、ビル・ゲイツは他の誰からも命令されることなく、独立した自分の意思で支配することが可能です。*12

もちろん、ビル・ゲイツの他にも最上位の支配者は多数いるでしょうが、象徴的な人物ではあるでしょう。

ビル・ゲイツを始めとする超資産家たちは羊飼いのマインドを持っているだろうか、というのが表題の問いです。

 

印象を排して考える

ビル・ゲイツは羊飼いのマインドを持っているのでしょうか。

テレビなどのメディアで見る彼はとても良い人物のように見え、人類のためになるビジネスをしているように見えますよね。

人を死なせて悪いと思わないようなサイコパスにはとても見えません。

しかし、表題の問いを考える際には、私たちが持っている印象を一旦ゼロにして考える必要があります。

もしかしたら、私たちが見ているメディアはビル・ゲイツに弱く支配されていて、ビル・ゲイツが良い人物であるような印象を受けるように操作されているかも知れないからです。

私たちはそのような軽度の洗脳を受けている可能性があるということです。*13

ですから、メディアが私たちに植え付けた(かも知れない)印象を一旦忘れた上で考えなければなりません。

 

持っていると仮定して考える

最上位の支配者が羊飼いのマインドを持っていると仮定して、何が起きるのかを考えてみましょう。

たとえば、巨大な製薬企業を支配している最上位の支配者が羊飼いのマインドを持っているとすると、何が起きるでしょうか。

 

支配者の目的は利益を最大化することであり、人々をより健康にすることにはあまり関心が無いかも知れません。

新薬を開発して売りまくることが出来れば大きな利益を得られますから、その新薬が実際に効くかどうか、また安全かどうかはあまり問題でないかも知れません。

副作用で人が死んだり重い障害を負ったりしても、強力な弁護士チームの力で賠償金を最小限にすることが出来るかも知れません。

あるいは、そもそも賠償をしなくて済むようにあらかじめ契約の条項を作っておくことが出来るかも知れません。

治験を依頼する企業には資金を提供して支配できますから、どうにかしてこちらが望む結果を出せと命令するかも知れません。

当局から認可を得るために長い治験期間が必要なのであれば、当局の役人を買収すれば特別に早く認可をもらえるかも知れません。

新薬が安全で効果的だと人々に信じさせるため、影響力のある医師などに金を渡して宣伝させるかも知れません。

新薬に対して批判的な研究・言動をする学者や、安価な既存薬が新薬より効果的であるとする研究をする学者がいたら、自分の支配下にある組織を使って誹謗中傷を行い、潰すことが出来るかも知れません。

新薬に対して批判的な内容の動画がネット上にあった場合、自分の支配下にあるメディアなら削除させるかも知れません。

 

貴方はどう思いますか?

そんなことはあり得ない、と思うでしょうか。

良く考えてみてください。

 

*1:羊の方は自分が殺される直前まで、羊飼いを自分の仲間だと思っているかも知れません。

*2:これに対しては、アイヒマンは実際に反ユダヤの思想を持っており、裁判で凡庸な役人を演じただけだとする反論もあります。この記事の趣旨としては、「仮にアイヒマンが羊飼いのマインドを持っていなくても、上からの命令に従っている限り同じ事になる」と指摘するだけで十分でしょう。

*3:マルチ商法でダウン(配下の加盟者)を支配する際にも、ある程度は洗脳が使われているでしょう。

*4:この記事ではいわゆる西側諸国のことを自由主義国と呼びます。

*5:もし国民の大多数が一致団結し、組織として政府に対抗できたなら、政府に命令できるほどの暴力を得たことになるでしょう。革命ですけどね。

*6:逆に政府が国民を洗脳していると言えます。「税金を払うのは当然のことだ」と思っている人が多いでしょう。子供の頃から学校などでそう教えられたからです。

*7:もちろん、北朝鮮のような独裁国であれば、主権者=国家における最上位の支配者です。

*8:独裁国の指導者が羊飼いのマインドを持っていることは自明でしょう。羊飼いのマインドを持っていない人物は、権力争いに勝って独裁体制のトップに立つが出来ません。

*9:子供に教育を受けさせよ、交通ルールを守れなどの命令は、皆が守れば皆が得をするのであり、無理に強制されているわけではありません。

*10:節税・脱税にはタックスヘイブン租税回避地)が利用されます。興味のある人はパナマ文書について調べてみてください。

*11:ここでは詳述しませんが、国民は政府を“縛る”ことは出来ます。命令は出来ません。

*12:どんな超資産家であっても政府には支配されているのではないかと思うかも知れません。しかし、税金を払わないための知恵を買うことも出来ますし、役人を買収することも可能です。場合によっては、自分に都合の良いように法律を変えることすら出来るかも知れません。

*13:軽度のと書きましたが、このような軽度の洗脳をメディアを通じて数多く受けているのだとしたら、重度の洗脳状態にあると言えるでしょう。