経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

仮想通貨は壮大な詐欺なのか?

はじめに

アメリカのあるヘッジファンドの創業者兼CEOが、「仮想通貨は史上最も優れた詐欺」だと書いたそうです。

www.mag2.com

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仮想通貨は詐欺なのでしょうか?

ネット上でも「仮想通貨は詐欺だ」という意見は数多く見られます。

それに対する反論として、「いいや、それは誤解だ。詐欺コインもあるが、まっとうな仮想通貨は詐欺などではない」ということを理詰めで説明している人もいます。

本当のところはどうなのでしょう?

今回の記事では、本当に仮想通貨が詐欺なのかどうかを考えるための足がかりとして、私が考えたある詐欺の計画について書いてみたいと思います。

デス紙幣を使った詐欺

私が考えたのは、デス紙幣を使った詐欺です。

デス紙幣というのは私が勝手に作る紙幣で、死神の協力によって偽造したり盗んだりすることが出来なくなっています。*1

「死神なんか居ないんだから最初から不可能じゃないか」と思われるかも知れませんが、これは仮想通貨の本質を考えるための思考実験ですので、そういう死神がいる前提で考えてください。

あらかじめこの詐欺の手口を簡単に説明しておくと、紙切れにすぎないデス紙幣を多くの人に売りつけて日本円を手に入れ、適当なところでバックレるというものです。

要約してしまえば、とても単純な手口ですね。

注意しておいてほしいことは、デス紙幣それ自体には死神の魔力が宿っているわけでもなんでもなく、本当にただの紙切れにすぎないということです。

使える店を作る

さて、私が1デス=1000円という価格をつけたとして、この価格でデス紙幣を買ってくれる人はいるでしょうか。

おそらく誰も買ってくれないでしょうね。

デス紙幣を買っても使えるお店がありませんので、ただの紙くずを1000円で買うようなものです。

では、使えるお店を作りましょう

ある町で商売をしている商店主10人(それ以上でも構いません)に協力を依頼し、彼らのお店でデス紙幣を使えるようにしてもらいます。

彼らのお店で受け入れたデス紙幣は、私のところに持ってくれば日本円と交換しますから、彼らに損はありません。
(持ってくるのが面倒なら、死神が受け渡しをやってくれます)

しかし損が無くてもメリットが無ければ協力してくれないでしょうから、商店主には協力に対する報酬を支払いましょう。

店で受け取ったデス紙幣が多ければ多いほど報酬が多くなる仕組みにすれば、積極的にデス紙幣を受け入れてくれるはずです。

送金サービスを提供する

さて、デス紙幣を使えるお店が出来ました。

町の人々はデス紙幣は買ってくれるでしょうか?

1デス紙幣を店に持って行けば1000円分の金券として使えますし、私のところに持ってくれば1000円の現金と交換することも可能です。

町の人から見れば、1デス紙幣には1000円の価値が実際にあるように見えるでしょう。

しかし、デス紙幣を買ってもらうのはまだ難しいかも知れません。

デス紙幣を使える店が限られているため、日本円のままで持っていた方がずっと便利だからです。

では、デス紙幣を使うメリットを作りましょう。

偽造できない、盗まれないというのもデス紙幣のメリットではあるのですが、わざわざデス紙幣を使うほどのメリットではありません。

デス紙幣は、いつでも誰にでも簡単に送金が出来て、しかも送金手数料は無料ということにしましょう。

送金する相手の名前と金額を紙に書いてデス紙幣と一緒に置いておくと、死神がその紙幣を相手の手元に10分で届けてくれて、確かに受け取ったという領収書を持ってきてくれるという具合です。

死神はだいぶ忙しくなりますが、素直に従ってくれるものと考えてください。

保有するメリットを提供する

さて、デス紙幣の便利な送金サービスが提供されました。

デス紙幣は買ってもらえるでしょうか?

そろそろ、新しもの好きの人たちが少しずつ買ってくれそうですね。

しかし、それだけではまだ詐欺の利益として足りません。

もっと多くの人に買って欲しいですし、一人当たりの購入額も大きい方がいいですし、買ったデス紙幣は使わずに保有していて欲しいですよね。

では、デス紙幣を保有するメリットを提供しましょう。

どんなメリットか?

ズバリ、デス紙幣を持っていると儲かるというメリットです。

楽して儲けたいと考えている人は大勢いますから、「デス紙幣を持っていると儲かる」という話を信じさせることさえ出来れば、多くの人がデス紙幣に手を出すでしょう。

デス紙幣を売買できる相場があって、どんどん値を上げているとなれば、楽に儲けたい人たちは食いついてくるはずです。

チャートを作る

取引所を作っていきなり1デス=1000円で一般に売り出し、そこから相場を上昇させようとしてもなかなか難しいでしょう。

今までに値がどんどん上がってきて、ついに1000円に到達したのだ、という実績が必要です。

当初1デス=1円で取引されていたデス紙幣が、1年ごとに10倍、3年で1000倍に上昇した、しかも天井感は無くまだまだ上を目指せそうだとなれば、食指が動く人は多いでしょう。

いきなり売るのではなく、時間をかけてチャート(値動きを図示したグラフ)を作ることにします。

チャートを作るとはどういうことか?

デス紙幣の価格は需要と供給で決まるのだから、思い通りのチャートを作ることは難しいのではないか?とお考えでしょう。

たしかにその通りです。

しかし、世の中のほとんどの人がデス紙幣を知らない時期であれば、また知っている人でもデス紙幣は無価値だと思っている時期であれば、仲間うちでデス紙幣を売買して好きなように価格を決めることが出来ますよね。

「オレがこのデス紙幣をBに10円で売るから、BはそれをCに20円で売って。そのあとオレがCから15円で買い取るから」といった具合です。

“仲間内”で売買している限りトータルで損得は発生しませんので、好きなようにチャートを描くことが出来ます。*2

デス紙幣が使える店がゼロの状態から1デス=1円で取引を始め、3年間で1000倍になる上昇相場を演出しつつ、少しずつ使える店を増やしていきましょう。

これと並行して、「デス紙幣は儲かる」という噂話を少しずつ広げていくことも必要です。

価格が3年で1000倍になったのですから、デス紙幣で大儲けしている人がたくさん居ておかしくないですよね。

実際には仲間内で売買している間は儲けは無いのですが、仲間の一人に「私が保有するデス紙幣の含み益は軽く1億円を越える」などと吹聴させてもいいでしょう。

一般への売り出し

「デス紙幣は儲かる」という話にマスコミが食いついたら、いい頃合いです。

世の中にたくさんいる「楽して儲けたい人たち」にアピールすることが出来たので、デス紙幣を買いたいという人が次々に現れるでしょう。

彼らが欲しいというだけデス紙幣を適当な価格で売ってあげて、代金として日本円を受け取ります。

渡すデス紙幣は単なる紙切れですから、受け取った日本円がまるまるこの詐欺の収入となります。

主な支出は協力している店に支払う報酬と、噂を広げるためにかかったコストであり、収入と支出の差が利益です。

バレない詐欺

(この節は読み飛ばしても構いません)

この詐欺が詐欺だとバレるのはどんな時でしょうか。

デス紙幣の価格を1デス=1000円に固定する場合には、店や一般保有者からの換金要求(売り注文)が私のところに来た時に、日本円が足りなくて応じることが出来なくなった時点で詐欺だったとバレます。

売り注文と同量の買い注文があればそれらをマッチングすればいい話ですが、売り注文の方が多い場合には余った売り注文を私が受けなければなりません。

たとえば、売り注文が1万デス、買い注文が1000デスだとすれば、私が9000デスを買わなければなりませんから、900万円が私の手元から出て行きます。

そうすると、私の手持ちの日本円が尽きたところで*3詐欺がバレてしまいます。

そうなる前に逃げる必要があるということです。

しかし、デス紙幣は固定相場制でなく変動相場制を採用することにしています。

買い注文よりも売り注文が多ければ、注文の数量が一致するところまで値を下げるのです。

したがって私の日本円が出て行くこともなく、詐欺であると明確にバレる瞬間はやってきません。

「何かおかしい」と感づいた人が少しずつデス紙幣相場から撤退していき*4、デス紙幣の価格は少しずつ、あるいは急激に下がっていきます。

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この時、高値掴みをして大損した人は「詐欺にだまされた」と感じるのではなく、「相場で失敗した」と感じるのです。*5

「詐欺にだまされた」なら犯人を捜すでしょうが、「相場で失敗した」なら悪いのは自分だと考えますから、詐欺の首謀者である私が追求されることはありません。

この点が、この詐欺の優れている点の一つです。

問題点

この詐欺の計画にはまだ問題点がいくつかあります。

問題点を挙げて、解決策を考えてみましょう。 

  1. 無制限に発行される懸念

    一般の人が「デス紙幣は際限なく発行されることで価値がどんどん下がるのでは」と心配した場合、デス紙幣に手を出してくれないでしょう。

    そのため、発行する数量に上限を設ける必要があるでしょうが、この発行上限の約束が守られると信じてもらわなければなりません。

    また、デス紙幣は簡単に好きなだけ発行できるわけではない、ということも信じてもらう必要があるでしょう。

  2. 発行者の信用に対する懸念

    デス紙幣の発行者は私という個人、あるいは私が設立する私的な組織です。

    人々は「この発行者は本当に信用できるのだろうか?買ったデス紙幣が突然使えなくなったりしないだろうか?」と考えるでしょう。

    どうにかして皆が私を信用してくれる状況を作れれば良いのですが、それは難しいかも知れません。

    ここは発想を変えて、デス紙幣は特定の人や組織が発行しているのではない、と言える状況をどうにかして作れないか考えてみましょう。

  3. 価値の裏付けの無さ

    少し頭の良い人には、デス紙幣が価値の裏付けの無い紙切れにすぎないことがバレてしまいます。

    どうにかして、デス紙幣そのものに価値があると信じさせることが出来ないでしょうか?

    たとえば、「デス紙幣は金に似ている」という話を作って人々に信じさせることができれば、デス紙幣そのものに価値があると勘違いしてくれるのではないでしょうか。

  4. 死神は存在しない

    根本的な話になりますが、死神は実際には居ない(居たとしても利用できない)という点がこの詐欺を実行する上で最大の問題点となります。

    死神の役割はデス紙幣の偽造や窃盗を防止することと、デス紙幣を送金することですが、どうにかして死神無しでこの詐欺を実行できないでしょうか?

    たとえば、今話題のブロックチェーン技術を使うことで死神の役割を代替することが出来ないか考えてみましょう。

おわりに

いかがでしょうか。
全ての問題点を解決してこの詐欺を実行できるような気がしてきましたか?

もし、この詐欺計画のデス紙幣と仮想通貨とが似ているのであれば、仮想通貨は壮大な詐欺である可能性が高いということになるでしょう。

「いいや、デス紙幣と仮想通貨は違う、仮想通貨は詐欺ではない」と考えるのであれば、デス紙幣と仮想通貨の相違点を見いだし、その相違点が仮想通貨の詐欺性を否定する根拠になるかどうか考えてみてください。

 

*1:偽造したり盗んだりすると死神に殺されます

*2:この時期に相場に参加してくる奇特な一般人がいた場合には、その人が大儲けしないように注意しながら相場を動かします。

*3:正確には「もうこれ以上日本円を出さないと決めた時点で」ですね。

*4:詐欺であることを承知で値上がり益を取っていた投機家もいるでしょうが、彼らはこれより少し前に「潮時だ」と感じて撤退しています。

*5:あるいは「天井はまだ先だ」と信じて持ち続ける人もいるでしょう。