「前回は、金利があると借金をした人全員が元金と金利を返すことは不可能だという話をしたよね」
「うん。でも、貸付額をどんどん増やしていけば全員が返せるように出来るんじゃない?」
「そうかも知れないね。どれぐらい増やしていこうか」
「最初の年が100万円でしょ。それから毎年10万円ずつ増やしてみたら?」
「ふむ。村歴2年に110万円、村歴3年に120万円と、貸付額を10万円ずつ増やしてみようか。返済額とマネーストックがどうなっていくかと言うと……」
「あら、返済額がマネーストックを越えちゃうわね」
「そうなんだ。これは、毎年20万円ずつ増やそうが、30万円ずつ増やそうが同じことで、貸付額を直線的に増やしていてもダメなんだ」
「どうして?」
「返済額が複利の借金のように増えちゃうからね」
「なんで?金利は5%の単利なのに」
「うーん、前回出したこのグラフを見れば一目瞭然だと思うよ。金利は5%の単利でも、返済額はガンガン上がってるでしょ」
「確かに……。じゃあ、貸付額を直線的にじゃなくて、ガンガン増やさなきゃだめなのね」
「そうだね、複利的に増やさないとダメだなんだ。例えば、毎年の貸付額を前年の5%増しにするとこうなる」
「これなら大丈夫ね」
「一応、全員が返すことは不可能ではないね」
「ふむ。これが毎年5%増しじゃなくて毎年4%増しだったら?」
「村歴57年に返済が不可能になるね」
「村中のお金を集めても返済できないわけね」
「うん。数字を変えながら調べてみると、毎年4.6%増しだと村歴146年に返済が不可能になるけど、4.7%だとギリギリ不可能にはならないことが分かったよ」
「ふむ。大ざっぱに言うと、毎年5%増しにしないと返済が不可能になるわけね」
「そういうことだね。要するに、金利分のお金を銀行がどんどん作っていないと、元金+金利の返済は不可能になるという、ごく当たり前の話なんだよ」
「そうなのね。返済が不可能になると、経済が破綻ってことなの?」
「いや、全然そういうことじゃないよ。現実の世界で、借金の返済が出来なくなった人はどうなる?」
「うーん……。マンガだと、家を取られちゃうとか、マグロ漁船に乗るとか……」
「そうだね。マグロ漁船に乗るってことは、働いて得られるお金の大半を取られちゃうってことだよね。ようするに、タダ働きをさせられる」
「そうね」
「家を取られるのも同じことだよ。働いて得たお金で買った家を取られるというのは、家を買うために働いたのがタダ働きになってしまったってことでしょ」
「そう言えるかもね」
「借金が返せなくなった人はタダ働きをさせられる。そして、金利というものがあると必ず借金を返せなくなる人が出るんだよ。椅子取りゲームで椅子に座れない人が必ず出るようにね」
「ははぁ」
「これは、借金が返せなくなった人だけの話ではないんだよ。私達はみんな、金利の分だけタダ働きをさせられてるんだ」
「えっ……。誰に?」
「もちろん、金利を取る側の人にだよ」
「うーむ……」