経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

マルクスの言う“資本”をスライムで考える

はじめに

経済評論家の山崎元氏が、ある記事で以下のように書いていました。

資本主義に対する批判者あるいは悲観論者は、「資本」がそれ自体の意思を持って動く抽象的でも具体的でもある単一の生命体のように思っているのではないか。まるで、資本という怪物がいるかのようだ。

そう、その通り。

この世界には資本という怪物達がはびこっていると言えます。

しかし山崎氏は、資本は単にその所有者が自由に処分できる「お金」に過ぎず、資本が意思を持って動くわけでは無い、意思を持って動くのは資本家という生身の人間だとします。

このように書いているところを見ると、山崎氏はマルクスを読んでいないのでしょうか?*1

と言うのも、マルクスは「資本それ自体が意思を持っているかのように運動する」ということを、つまり、まさに「資本という怪物がいる」ということを言っているからです。

もちろん資本というものが本当に意思を持っているわけではありませんが、怪物という比喩を使うと、この資本主義社会で何が起きているのかが分かりやすくなります。

今回の記事では資本を怪物(モンスター)として擬人化することによって、資本とは何なのかを考えてみましょう。

 

資本とは何か

マルクスによれば、資本とは「自己増殖する価値の運動体」のことです。

抽象的でなんだか良く分かりませんね。

これを擬人化すると「資本とは自ら大きくなっていく怪物である」となります。

スライムのようなモンスターをイメージしてみてください。

それが資本です。

資本は自己増殖するのですから、そのスライムはどんどん大きくなろうとします。

大きなスライムは大きな資本ということであり、その大きさが価値の大きさを表します。

世界には小さなものから巨大なものまで様々な大きさのスライムがうごめいていて、お互いに争い合っているわけですね。

 

資本家とは何か

しかし実は、このスライムには脳がありません。

自分だけでは動くことができないのです。

そのためスライムは、自身の体を動かすための脳の代わりに「資本家」という人間を取り込みます。

資本家がスライムの体を操縦する者となって、スライムを大きくしていくのです。

その代わりに、スライムの操縦者たる資本家は、スライムから報酬を受け取ります。

 

2種類の資本家

「資本家」という言葉には2つの意味があります。

一つは企業を経営して労働者を使う人のこと。

機能資本家と呼ばれます。

もう一つは資本金を出すだけで直接経営はせず、利潤の配分を得る人のこと。

無機能資本家と呼ばれます。

この記事では資本の操縦者(パイロット)を「資本家」と呼んでいますから、もちろん一つ目の意味の機能資本家のことです。

 

商業スライム

さて、このスライムはどうやって大きくなるのでしょうか。

スライムの体は最初、お金で出来ています。

パイロットがこのお金を商品に換えます。

つまり、商品を買います。

次に、この商品をお金に換えます。

つまり、商品を売ります。

お金から商品に姿を変え、さらに商品からお金に姿を変えたわけですね。

 

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貨幣→商品→貨幣 と姿を変えることでスライム(資本)は大きくなる

 

この時、最初の状態と比べてお金が増えていれば、スライムの体が大きくなったということです。

このプロセスを繰り返して大きくなっていくスライムを、商業スライム(商業資本)と言います。

 

産業スライム

商業スライムの他に、産業スライムという種類のスライムもいます。

このスライムの体も最初はお金で出来ています。

スライムのパイロットはこのお金で商品を作って売ることにより、お金を増やそうとします。

もう少し具体的に言うと、パイロットはお金で原材料、機械、労働を買います。*2

そして、それらのものが商品に変わります。

この商品が売られて、再びお金になるわけです。

この時、最初の状態と比べてお金が増えていれば、スライムが大きくなったということです。*3

このプロセスを繰り返して大きくなっていくスライムが、産業スライム(産業資本)です。

 

資本を蕩尽するということ

山崎元氏はこう言います。

(資本家が)いい投資機会がないと判断するなら、物を買うなり、飯を食うなり、目立つために使うなり、「GO TO 蕩尽!」が可能なのだ。

蕩尽(とうじん)というのは、財産を湯水のように使いはたすことですね。

資本は換金して消費に使える、だから資本は「お金」にすぎないというわけです。

この話をよく考えてみましょう。

A氏が工場という資本を持っているとします。

景気の先行きが暗いと判断したA氏は、この工場をB氏に売ってお金に換え、蕩尽してしまいました。

この時、資本は蕩尽によって消滅したのでしょうか?

そうではありませんよね。

工場という資本はA氏からB氏の手元に移ったのです。

スライムで考えるなら、工場というスライムがそのパイロットをA氏からB氏に換えただけのことです。

A氏が資本を見限ったのではなく、逆にスライムがA氏を見限ったのですね。

「換金して蕩尽しよう」と考えた時点で、A氏はスライムのパイロットとして不適格だったわけです。

 

まとめ

  • 資本とは、自ら大きくなろうとするスライムのようなモンスターである
  • 資本はその姿を お金→商品→お金 のように変えていくことにより大きくなる
  • 資本が活動して大きくなるためには、適切なパイロット(資本家)と労働者が必要*4

 

次回、資本というスライムにとってどんな人間がパイロットや労働者として望ましいのかを考えます。

 

whatsmoney.hateblo.jp

 

*1:筆者もかじる程度にしか読んでいないので人のことは言えませんが。

*2:マルクスによれば資本家が労働者から買うのは労働力です。資本家がこの労働力を使用すると労働が出てくるというわけです。ここでは話を簡単にするため、お金で労働を買っているとします。

*3:もちろん機械は(すり減ったとはいえ)まだ残っていますから、その価値とお金の価値との合算で考えます。

*4:小規模な商業資本ならパイロット一人だけでも成立しますが。