経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

"credit"という単語のコアイメージを掴もう

"credit"を安易に“信用”と訳すな

"credit"という英単語の意味をご存じでしょうか。

信用、その通りです。

しかし、他にもいろいろと意味があるのです。

例えば、掛け売り、信用貸し、債権、預金という意味があります。*1

また、動詞としてはもちろん「信用する」という意味なのですが、「貸方(かしかた)に記入する」という意味もあります。

貸方というのは簿記の用語で、バランスシートの右側、負債を記入する側のことです。*2

こんなにたくさんの意味があるのに、"credit"という単語が出てくると私たちは即座に“信用”という言葉に変換して分かった気になってしまいます。

たとえば、次のような文です。

Money is credit. *3

この文は普通、「貨幣とは信用である」と訳されます。

しかし、「貨幣とは信用である」と言われて意味が分かるでしょうか?

正直な人なら「良く分からない」と言うでしょう。*4

あるいは、なんとなく分かったような気分になる人もいるでしょう。

しかし、「貨幣とは信用である」と言われてその意味を正しく理解できるのは、もともと貨幣とは何かを理解している人だけなのです。

"credit"を「信用」と訳すぐらいなら、「クレジット」とカタカナで表記する方がまだマシだと私は思います。

「貨幣とはクレジットである」と言われれば、「ふーむ……。クレジットってどういう意味で言ってるの?」となるでしょう。

そこなんです。

"credit"がどういう意味なのかが問題なんです。

 

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英単語のコアイメージ

誰が最初に提唱したのか分からないのですが、英単語はコアイメージで覚えよう、という考え方があります。

例えば"run"という単語のコアイメージは「一方向に(すらすら)流れるように移動する」あるいは「ある方向に、連続して、なめらかに、動く」なのだそうです。

これを絵で表したのものが以下です。

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このイメージさえ覚えておけば、"run"に川が「流れる」とか、舞台などが「長く上演される」と言った意味があることを思い起こせるというわけです。

たくさんの意味がある"credit"という単語にも、コアとなるイメージがあれば便利ですよね。

何か無いでしょうか?

安心してください、私が先日見つけておきました。

 

"credit"のコアイメージ

ゲームセンターにあるゲーム機には、クレジットってありますよね。

百円玉を投入するごとに画面上で1増えるアレです。

ご存知の方もいるでしょうが、ゲーム機の鍵を開けて中にあるボタン*5を押すと、お金を入れなくてもクレジットを増やすことが出来るのです。

"credit"のコアイメージは、「ゲームセンターの店主がゲーム機の中にあるボタンを押してクレジットを増やす」です。

もし百円を後日支払うことをお客さんに約束させてクレジットを増やしたのだとすれば、これは1ゲームプレイする権利を「掛け売り」したことになります。

また、クレジットを増やすとゲームセンター側はお客さんにその分だけゲームをプレイさせる義務を負います。

ゲームセンターとしては、この義務=債務をバランスシートの「貸方に記入する」ことになります。

お客さん側から見れば、クレジットはゲームをプレイする権利であり、「債権」です。

そして、この債権をお金として使うことも可能です。

「お前が持っているそのジュースを俺に譲ってくれ。代わりにこのゲームのクレジットをあげるから」という具合です。

お金として使うなら、クレジットは「預金」だと言えます。

さらに、後日返済することをお客さんに約束させてお金としてのクレジットを付与したのであれば、これは「信用貸し」したことになるでしょう。

 

いかがでしょうか。

"credit"という単語のイメージが掴めたのではないかと思います。

このイメージを頭に入れた上で、「貨幣とはクレジットである」と言われれば意味が良く分かるでしょう。

また、信用創造を「クレジット創造」、信用貨幣論を「クレジット貨幣論」と言い換えてみてください。

理解している人はさらに理解が深まるでしょうし、理解していない人への説明にも使えると思います。

*1:他にも評判、名誉といった意味もありますが、ここでは経済に関係する意味だけを考えましょう。

*2:正確な説明にはなっていないので、詳しくは検索して調べてください。

*3:この文はミッチェル・イネスの"What is Money?"という論文からの抜粋で、原文では"Money, then, is credit and nothing but credit."となっています。

*4:ブログでMMTの理論を日本に紹介したリッキー氏も、"What is Money?"の粗訳を書く際に『今、困っているのは、credit の訳語をどうするか。「信用」では意味が分からないと書き、"Money, then, is credit..."の部分では「債権」という訳語を選択しています。

*5:ボタンなのかスイッチなのか、見たことが無いので分からないのですが。