(前回のあらすじ:一万円札は価値の無い紙幣なの?)
「いま、金本位制の国と、管理通貨制度の国があるとするよね」
「えっ…と…」
「金本位制の国の紙幣は兌換(だかん)紙幣と言って、金(ゴールド)と交換できる。一方、管理通貨制度の国の紙幣は不換紙幣と言って、金との交換はできないんだ」
「…知ってたわ」
「この兌換紙幣と不換紙幣をあるレートで交換できるとしたら、どうする?」
「うーん、別にどうもしないかな」
「まぁ、そうだね。国が不換紙幣を金と交換してくれなくても、その辺の店で金を買えるからね」
「そうよね」
「じゃあ、もし君が、不換紙幣の国の中央銀行のトップだったらどうする?」
「中央銀行の…?」
「要するに、君は不換紙幣を好きなだけ、タダ同然のコストで印刷できる」
「それなら、どんどん紙幣を印刷して、兌換紙幣と交換して、さらに金と交換するわね」
「うん、大儲けできるよね。逆に、もし君が兌換紙幣の国のトップだったら?」
「冗談じゃないわよ!紙幣の交換なんて禁止よ、禁止!」
「そうだよね」
「だから、実際にはこんなこと出来ないんでしょ?」
「いや、実際に昔、こういうことが起きているんだよ」
「えっ…」
「例えば1932年当時、イギリスは不換紙幣の国で、アメリカとフランスは兌換紙幣の国だった。イギリスはポンドを売ってドルとフランを買いまくり、アメリカやフランスの金をどんどん奪っていったんだ」
「まさか…」
「アメリカもフランスも、どんどん金を失っていき、ついには金本位制を放棄したんだよ」
「バッカみたい。紙幣の交換を禁止すればよかったのに」
「その通り、不換紙幣と兌換紙幣の交換は許すべきじゃないんだ。アミューズメントカジノのチップとカジノのチップの交換を許すべきじゃないとの同じことだよ」
「じゃあなんで禁止しなかったの?」
「うーん、お互いに貿易をしている以上、紙幣の交換を禁止するわけにはいかないよな」
「だったら、さっさと金本位制をやめちゃえば良かったのに」
「確かにね。まぁ、とにかくこれで、兌換紙幣は価値のあるお金で、不換紙幣が価値の無いお金だってことが分かっただろ?」
「えっ…あ、うん…そうなのかな…」