「ねぇ、一万円札には一万円分の価値があると思う?」
「当たり前でしょ?質問の意味が分からないわよ」
「例えば今、金が1グラム5000円だったとして、一万円札には金2グラムの価値があるかな?」
「あるでしょう」
「でも日本銀行に一万円札を持っていっても金には交換してくれないよね」
「そうかも知れないけど、お店に行けば買えるし」
「確かにね。でも一万円札って日銀がどんどん印刷できるよね」
「そうね」
「印刷したらしただけ価値が生み出されるのかな」
「んー、そうなんじゃないの?」
「今、円の現金が総額で100兆円あるとするよね。金なら2万トン分だね」
「ふーん」
「円をたくさん印刷して倍の200兆円にしたら、金4万トン分の価値になるかな?」
「うーん、そうはならないと思う。インフレって言うの?お金の価値が半分になって、結局変わらないんじゃない?」
「そんな気がするね。じゃあ、100兆円の現金を一箇所に集めて、金2万トンを買おうと思ったら、売ってくれる人はいるかな」
「そんなに金を持ってる人は居ないんじゃない?」
「もし仮に、君が金2万トン分を持ってたとして、100兆円で売る?」
「うーん……なんかイヤ」
「どうして?」
「せっかく金を持ってるのに、紙のお金にしたくない気がする」
「1000兆円ならどう?」
「いくらでも同じよ。どうせただ印刷しただけの紙切れでしょう?金の方がずっといいわよ」
「そうだよね。僕もそう思うよ」
「うん」
「100兆円の現金には、金2万トン分の価値は無い。そうだね?」
「そうね。全然無いわ」
「じゃあ、一万円札には金2グラム分の価値があると思う?」
「え?……うーん、良く分からなくなってきたわ」
(つづく)