アミューズメントカジノというものをご存知でしょうか。
本物のカジノと同じようにチップを賭けてゲームをして、チップを増やしたり減らしたりするお店です。
ただしアミューズメントですから、このチップを換金することは出来ません。
その代わりに、チップをお店に預けると次回来店した時に引き出して使える仕組みになっています。
(引き出し料がかかるのが普通ですが)
このアミューズメントカジノのチップは、私達が普段使っているお金に良く似ています。
どこが似ているのかを先に書いてしまうと、以下の2点です。
・預ける(預金)というシステムがある点
・本物のお金(正貨)とは交換出来ない点
これだけでは良く分からないと思います。
以下、詳しく説明していきます。
アミューズメントカジノでは、初めて来店したお客さんは最初にチップを買って遊びます。
帰る時には残ったチップをお店に預けるのですが、初めてのお客さんには、残ったチップとは別に一定額のチップをプレゼントしてくれます。
例えば1000ドルをプレゼントしてくれて、次回来店した時に引き出して使えるようにしてくれるわけです。
要するにリピートしてもらうためのインセンティブですね。
換金できないチップですから、お店としては懐は痛みません。
さて、このプレゼントのチップですが、1000ドル分のチップをお客さんの目の前に出すわけではありません。
どうするかと言うと、ノートや帳簿にお客さんの名前と1000という数字を記入するのです。
(今どきならばパソコンに入力しますが、ノートでも同じことです)
ただ単に数字を記入するだけで、チップをプレゼントしたことにしています。
このプレゼントチップを含めて、このお店での預けチップがどのように増えていくかを考えてみましょう。
出来るだけ話を簡単にしてみます。
・初めて来店したお客さんは、その日はゲームをせず1000ドルの預けチップだけもらって帰る。
・二度目以降のお客さんは、1000ドルを引き出して遊び、最終的に1000ドルに戻して預けて帰る。
・お客さん全員が上記の行動を取る。
・お店とお客さんがチップを取り合うゲームは無く、お客さん同士がチップを取り合う(麻雀のような)ゲームしか無い。
・お店はゲーム代としてチップを徴収しない。
・毎日新しいお客さんが10人来店する。
この条件だと、二度目以降のお客さんは預けチップの量を変化させず、新規のお客さんだけがチップの量を増やしていきます。
オープン初日の営業が終わった時点では、1000ドル×10人=1万ドルの預けチップがありますね。
毎日1万ドルずつ預けチップが増えていき、100日目の営業終了時点では100万ドルの預けチップがあることになります。
さて、プラスチック製の手で触れるチップのことを物理チップと呼ぶことにしましょう。
この物理チップはどれぐらいあれば良いでしょうか。
100日目の時点でお客さんは1000人いますが、全員が一度に来店することはありませんね。
多めに見積もって一度に最大50人来るとして、全員が1000ドル引き出せば5万ドル、物理チップはその倍の10万ドルほど用意しておきましょうか。
…という計算はオープンの前にあらかじめしてあり、お店には最初から10万ドルの物理チップが用意してあったのでした。
100日目の時点で、物理チップ10万ドルに対して預けチップは100万ドルに膨れ上がっていますが、それでも問題なくお店が回ることは想像できるでしょう。
ここで、100日目の営業が終わった後のお店を想像して下さい。
営業が終わった後ですから、お客さんの手元にあったチップは全て預けチップになっています。
その総額は100万ドルですね。
この100万ドルとは別に、テーブルには物理チップが10万ドル分あります。
この物理チップは誰のものでしょうか?
物理チップがお客さんの手元にあった時にはもちろんそのお客さんのものです。
しかし、お店への預けが終わった時点では、そのお客さんのチップは帳簿上の数字として記録されています。
物理チップ自体はお客さんのものではなくなったわけです。
ではカジノのものになったのか?
このお店ではカジノ側はチップを使いません(お客さん同士の取り合いしかない)ので、カジノのものになったというのもちょっと変ですね。
この物理チップは「誰のものでもなくなった」と考えることにしましょう。
チップを預けた時点で、物理チップは抜け殻となり、本当のチップは帳簿に移ったわけです。
次回来店してチップを引き出した時には、帳簿にある本当のチップが物理チップ(抜け殻)に乗せられて渡されることになります。