経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

モノポリーで考えるお金と経済の本質

モノポリーというゲーム

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モノポリーというゲームを知っていますか?」

「聞いたことはあるけど、やったことは無いな」

「数人でプレイするボードゲームなんですが、資本主義社会のルールを学ぶことが出来るゲームなんですよ」

「へぇ。どんなゲーム?」

「土地を所有してレンタル料を搾取し、その土地に家やホテルを建てて搾取するレンタル料を高額にするなどして、他のプレイヤーを破産に追い込むゲームです」

「ほう。搾取のゲームってわけか」

「そうですね。所有をすれば搾取が出来る、という資本主義社会の基本的なルールを、ゲームの中で体験的に学ぶことが出来ます」

「へぇ」

「このゲームでは、バンカーという役割を担当する人が必要です」

「バンカーって何?」

「争い合うプレイヤーとは別に、ゲームを取り仕切る人のことです*1

「ふむ。ゲームの進行役ってわけか」

「その通りです。このバンカーは、実際の経済の中では何に当たるのかを考えてみましょう」

「バンカーって言うぐらいだから、銀行じゃないのか?」

「まぁ、3分の1ぐらい当たってますね。まず、バンカーがやることを整理してみましょう。」

「ふむ」

バンカーはお金の受け渡し役

(1)ゲームの開始時に、各プレイヤーに1500ドルずつ渡す

(2)プレイヤーに給料として200ドル渡す*2

(3)税金や罰金等の名目で、プレイヤーからお金を受け取る

(4)色々な名目で、プレイヤーにお金を渡す

(5)プレイヤーに土地を売り、お金を受け取る

(6)土地に家やホテルを建て、プレイヤーからお金を受け取る

(7)プレイヤーを刑務所に入れ、出る時にお金を受け取る

(8)鉄道や公営の事業をプレイヤーに売却し、お金を受け取る

(9)土地などを抵当に入れたプレイヤーにお金を貸す

(10)家やホテルを売りたいプレイヤーから買い取り、お金を渡す

(11)プレイヤーの手元に無いお金や権利証などを管理する

(12)土地などの競売を取り仕切る

 

「主にこんな感じですね」

「結局、お金を受け取るか渡すかするわけだな」

「そうですね。お金の受け渡し役という意味で、バンカーと言えるわけです」

「だったら、銀行と言い換えてもいいんじゃないか?」

「実際の銀行がやるとしたら、(9)のお金を貸すことぐらいですかね。(2)の給料を払うこともしますが、自行の従業員に対してだけです。その他の項目については、基本的には銀行はやりません」

「そうなのか?」

バンカーは政府

「その他の項目は、だいたい政府がやるようなことが多いでしょう。税金の徴収もそうですし、プレイヤーを刑務所に入れて罰金を取ることもそうです*3

「ああ、そうかもな」

「バンカーがプレイヤーを雇っているわけでもないのに給料を200ドル支払ってるのも、政府がベーシックインカムを給付しているようなものですよ」

「ふーむ、たしかに……。しかし、(5)の土地を売るなんてのは不動産屋のやることじゃないか?」

「そうも言えますが、バンカーは土地の売買で利益を出そうとするわけではありません」

「そりゃそうか」

「そもそも、ゲーム開始時には全ての土地の権利証はバンカーが持っているわけです。民間の不動産屋だと考えるのは無理があるでしょう」

「それもそうだな」

「これは、政府が全ての土地を国有地としてもっていて、その国有地を民間のプレイヤーに払い下げていると考えるのが妥当でしょう」

「なるほど。そうすると、バンカーってのは政府と銀行の役割を兼ねてるってことか?」

「3分の2ぐらいは当たりですね。と言うのは、バンカーは単なる銀行と言うよりも、中央銀行を兼ねた銀行だと言えるからです」

中央銀行?なんで?」

バンカーは中央銀行

「バンカーはお金を発行することが出来ますからね」

「お金の発行なんてしてないだろ。既にあるお金を配ってるだけじゃないか?」

「たとえば、バンカーからプレイヤーにお金を渡す必要がある時に、バンカーの手元にお金が全く無かったらどうすればいいでしょうか」

「そりゃ、最初に用意してあったお金が単純に足りなかったってことだろ。バンカーが紙を切って数字を記入して、お金を作ればいい……。あっ!」

「そう。それこそが、バンカーがお金を発行するということです」

「そういうことか……」

「ゲームを開始した直後に風でお金が吹き飛んで無くなったとしても、バンカーがお金を作って配り直せば問題ないですよね」

「うーん……。でもそれは、単にゲームに足りない用具を作り直しただけのことで、お金の発行とは違うんじゃないか?」

「ゲームを観戦している人の立場で見れば、その通りです。でも、ゲームの中にいるプレイヤーの立場で見れば、バンカーがお金を発行していることに間違いありません」

「ああ、そりゃそうか」

「というわけで、モノポリーのバンカーは政府の役目と中央銀行の役目を担っています*4

「そうなるか」

バンカーは統合政府

「つまり、バンカーは統合政府に当たるということです」

「統合政府って何だ?」

中央政府中央銀行をまとめて一つの経済主体として見たものを、統合政府と言うのです」

「へぇ。良く分からないけど、政府と中央銀行の役目を兼ねたものなんだな」

「その通りです。モノポリーのバンカーは実際の経済では統合政府に当たると見ることが出来る、ということが分かりましたよね」

「ああ」

「そうすると、バンカーにとってお金とは何かを考えると、統合政府にとってお金とは何かが分かるのです」

「ほう?」

お金とは何か

「バンカーにとってお金は、自分でいくらでも作り出すことが出来るものです。でも、たくさん作ったからといってバンカーが得をするわけではありません」

「そりゃそうだな。バンカーはゲームをプレイしているわけじゃなくて、ゲームを取り仕切ってるだけなんだから」

「そうです。それと同じことで、統合政府はお金をいくらでも作り出すことが出来ますが、だからといって統合政府が得をするわけではありません」

「なるほど……」

「バンカーがプレイヤーから税金を受け取っても、別にバンカーが得をするわけじゃありません。また、バンカーがプレイヤーに給料を支払っても、別にバンカーが損をするわけじゃありません」

「そりゃそうだ。でも、プレイヤー側は得したり損したりするよな?」

「もちろんです。プレイヤーはゲームをプレイしているのですから」

「バンカーと同じように、統合政府はゲームをプレイしているのではなく、ゲームを取り仕切る側だ……と」

「その通りです。だから、統合政府は税金を受け取っても別に得するわけじゃないし、医療費を支払ったり公共事業に支出したりしても別に損するわけじゃないってことです」

「なるほど、良く分かった」

財政赤字とは何か

「では次に、財政赤字について考えましょう。財政赤字というのは、ある期間に統合政府が受け取ったお金よりも支払ったお金の方が多い状態のことです」

「それは、モノポリーで言うと……?」

「ある期間にバンカーがプレイヤーから受け取ったお金よりも、バンカーがプレイヤーに渡したお金の方が多かったということです」

「ふむ。だからと言ってバンカーが困るわけじゃないな。お金が足りなくなったら作ればいいわけだし」

「その通り。プレイヤーにとってはお金が増えてゲームがやりやすくなります。破産は遠のきますから、ゲームが終わらなくなってしまうかも知れませんけどね」

「現実の経済で言えば、財政赤字によって統合政府が困ることはなくて、民間の家計や企業はお金が増えて経済活動がやりやすくなると」

「その通りです」

「そして、破産する人や企業が少なくなって、……“独占”がしづらくなって、経済が“終わらない”?……良いことづくめじゃないか?」

「そうかも知れませんね」

「ふーむ……」

国債とは何か

「では次に、国債について考えてみましょう。モノポリー国債はありませんが、同様のものをバンカーが発行するとしたらどうなるでしょうか」

「まず、バンカーが紙を切って国債を作るよな。額面を……500ドルとしようか。国債、500ドルと紙に書いて切れば完成だ」

「そうですね」

「これを、希望するプレイヤーに500ドルで売るわけだ。国債と書いた紙切れを渡して、お金を500ドル受け取る」

「そうです。国債を売ってお金を受け取った時、バンカーは嬉しいでしょうか?」

「えっ、何も嬉しくないけど」

「そうですよね。満期が来たらどうなりますか?」

「プレイヤーに500ドル渡して、金利としてさらに50ドルぐらい渡せばいいんじゃないか」

「そうですね。この時、バンカーは損をしましたか?」

「別に何も損してないよ。プレイヤーはちょっと得したけど」

「そうですよね」

「というか、モノポリーで考えると、国債って何のために発行するのか全然分からないんだけど」

「そう、その通りです。国債というものは実は、何のために発行するのか良く分からない程度のものなんです」

「いやいや、国債って国の借金の証文でしょ?」

「バンカーや統合政府はお金を作る立場にありますから、そもそも借金をする必要がありません」

「そりゃそうかも知れないけど、実際に国債が発行されてるんだから、何か意味があるだろ」

「そうですね。バンカーが国債を発行してプレイヤーに売ると、プレイヤーからお金を回収することが出来ます。バンカーが国債をプレイヤーから買い取ると、プレイヤーにお金を供給することが出来ます」

「お金の量を調節できるってことか。それだけ?」

「基本的にはそれだけですね*5

「ふーむ……」

統合政府の負債とは何か

「最後に、統合政府の負債について考えましょう。統合政府が作ったお金の発行残高*6国債の発行残高*7は、統合政府にとって負債となります」

「ふーん。それは、モノポリーで言うと……?」

「プレイヤーの手元にあるお金と国債の総額が、バンカーにとって負債となるということです」

「ふーん……。バンカーにとっての負債は、増えても別に困らないんだよな」

「そうです」

「減っても別に嬉しいわけじゃないんだよな」

「その通りです」

「それを負債と呼ぶことにどんな意味があるんだ?」

「うーん、あまり意味はありませんね。意味があるとしたら、お金や国債をバンカーの負債と呼べば『誰かの資産は必ず誰かの負債である』という原則が守られるということぐらいですかね」

「ふーん。プレイヤーの手元にあるお金と国債の総額をバンカーの『負債』と呼ぶことにあまり意味が無いんだとすると、発行したお金と国債の総額を統合政府の『負債』と呼ぶことにも、あまり意味は無さそうだな」

「そうなりますね」

*1:プレイヤーの一人がバンカーを兼ねることも出来ますし、プレイヤー全員でバンカーをやることも出来ます。

*2:GOのマスに止まるか通過するともらえます。

*3:実際のゲームは、遺産でお金が入るとか生命保険の満期でお金が入るなど、銀行も政府も関係なくお金が出入りすることもあります。

*4:もちろん、市中の銀行としての役目も担っています。

*5:それによって金利を調節できるかも知れません。

*6:マネタリーベースに当たります。

*7:中央銀行保有している分は除きます。