経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

土地のレンタル料=地代の正当性を疑う

地代は搾取なのか

「前回、遊んで暮らすためには搾取をするしかないって話をしたけど」

「うん」

「土地をたくさん持ってる人、つまり地主って、遊んで暮らせるよね」

「そうね。土地を貸して賃料を定期的に受け取れるもんね。土地をたくさん持ってれば遊んで暮らせるわ」

「そうだよね。地主は土地のレンタル料、つまり地代を受け取ることで遊んで暮らせるわけだ」

「うん」

「僕が前回言った『遊んで暮らすためには搾取をするしかない』ということが正しいとすれば、地代も搾取だということになるよね」

「ふむ」

「マイはどう思う? 地代を受け取るのは正当な権利だろうか、それとも不当な搾取だろうか」

「そりゃ、正当な権利でしょ」

「どうして?」

「うーん。だって、その人が土地を買った時、それなりの大金を払ってるでしょ。買ったのは先祖の人かも知れないけど」

「土地を手に入れるのにちゃんと相応の対価を支払ってるんだから、地代を受け取るのも正当な権利だと?」

「そうでしょ」

「まぁ、一理あるね。でも、土地って大昔は誰のものでもなかったはずだよね」

「そりゃまぁ、そうね」

「だったら、誰のものでもなかった土地を、一番最初に自分のものにした人がいるはずでしょ」

「うん」

「その人は、どうやってその土地を自分のものにしたんだろう」

「うーん。最初にその土地を見つけた人が、自分のものにしたとか?」

「あり得るね。でも、既にみんなで暮らしている土地があって、その土地が誰のものともされていなかった、というようなケースの方が多いはずでしょ」

「ふーむ」

「その場合、最初の所有者はどうやって土地を自分のものにしたんだろうか」

「さぁ⋯⋯」

 

 月の土地

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「ところで、月の土地を販売してる会社があるんだけど、知ってる?」

「ああ、聞いたことがあるわ」

アメリカのルナエンバシーという会社が売ってて、日本でもネットで買えるんだよね」

「あれってどうなの? 本当に月の土地を所有したことになるの?」

「サイトにはこんな風に書いてあるよ。『(デニス・ホープ氏は)1980年にサンフランシスコの行政機関に出頭し(月の土地の)所有権の申し立てを行ったところ、正式にこの申し立ては受理されました。』」

「へー、すごい!ちゃんと認められてるんだ!」

「あのねぇ。申し立てが『受理された』だけだからね。所有権が認められたとは誰も言ってない」

「⋯⋯なーんだ」

「要するにルナエンバシーは『月の土地の所有権を手に入れたぞ!』と勝手に言ってるだけだよ」

「えー! それって詐欺なんじゃないの?」

「まぁ、買う側も本気で権利が手に入るとは思ってないだろうけどね」

「うーん、そうか。夢とかロマンを買ってるような感覚?」

「そういう人が多いだろうね。でも、本気で『詐欺だ!』と訴えてくる人もいるかもね」

「大丈夫なの?」

「ちゃんと逃げは打ってあるよ。将来月に現実に行くようになった時、ルナエンバシーの主張が世界的に認められる保証は無い、と書いてある」

「用意周到ねぇ」

「ビジネスとしては当然のことだ」

「ふーむ。ところで、なんで月の土地の話をしたの?」

「誰のものでもない土地を最初に手に入れる人は、まず『この土地はオレのものだ!』と宣言するところから始めるってことを説明したかったんだよ」

「そりゃまぁ、主張しないと何も始まらないからねぇ⋯⋯」

「でも、主張したからって土地を手に入れられるとも限らないよね」

「そうね」

 

無人島の土地 

「ここで、無人島の土地について考えてみよう」

無人島?」

「A氏、B氏、C氏の三人が海を漂流していて、ある小さな無人島に流れ着いたとする」

「ふむ」

「外部と連絡が取れなければ、三人はここで暮らしていくしかないよね」

「そうね」

「仲良く協力して暮らしていればいいんだけど、自分勝手な性格のA氏が、この島の土地は自分のものだと言い出した」

「なんでよ!」

「この島に最初に足を踏み入れたのは自分だったとか、理屈はなんでもいい。とにかく、A氏はこの島が自分のものだと宣言し、他の二人はしぶしぶ承諾した」

「納得いかないわね。どうして承諾しちゃったの?」

「二人が『分かった』と言うまで、何度も何度もしつこく繰り返し主張したのかも知れない」

「ウザっ!」

「A氏が乱暴者なら、暴力をふるって脅したのかも知れない」

「ひっど!」

「いずれにせよ、二人はA氏が島の土地を所有していることを仕方なく認めた」

「うーん⋯⋯」

「そしてA氏は、二人に地代を支払うように要求した」

「なによそれ!」

「地代として支払うのは、一日につき魚二匹だ。これをB氏、C氏の二人ともが支払う」

「どこかで聞いたような話ね。A氏は働かなくても一日に魚が四匹手に入るってわけか」

「そう。これが十分な量なら、A氏はこの島で遊んで暮らせるよね」

「そうね」

「このケースでは、地代が搾取であることがはっきり分かるでしょ?」

「たしかに」

「では次に、この土地が売買された時のことを考えよう。C氏はA氏からこの島の土地を買い取ることにした」

「ほう。いくらで?」

「魚一万匹としよう」

「そんなにたくさんは捕れないでしょ」

「うん。だから、魚を少しずつ合計一万匹渡すという手形のようなものを、C氏が発行してA氏に渡すんだ」

「なるほど」

「今度はC氏がA氏、B氏から地代を徴収することになる。C氏が地代を取るのは正当な権利だろうか」

「正当な権利でしょ。だって、ちゃんと対価を支払ってるんだから」

「ふむ。正当だとしようか。では、C氏が買った土地をもう一度A氏が買い戻したらどうだろう」

「えっ」

「A氏が持ってる魚一万匹の手形をC氏に渡せば、土地を買い戻せるよね」

「そうね⋯⋯」

「元の状態に戻っただけなんだけど、再びA氏がB氏、C氏から地代を取るのは正当な権利だと思う?」

「うーん⋯⋯」

「これはやはり、不当な搾取であることに変わりないよね。だって、土地を売って買い戻すだけで不当性が消えちゃうのはおかしいでしょ」

「たしかに⋯⋯」

「つまり、地代を取るのが不当な搾取であることは、土地が売買されても変わらないということだよ」

「うーん⋯⋯」

 

インディアンの土地

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「次に、実際の歴史に目を向けよう。題材はインディアンの土地だ」

「インディアンって、アメリカの?」

「そう。アメリカの原住民はインディアンと呼ばれているよね。実はインディアン達には、土地を私有したり売買したりする習慣が無かったんだ」

「ふーん。全部国のものだったってこと?」

「いや、国家と言えるものも無かったし、土地を所有するという概念自体が無かったんだよ」

「へー! 土地は誰のものでもなかったってこと?」

「そういうこと。土地は誰のものでもなかったし、みんなのものだったとも言える」

「なるほど」

「その、誰のものでもなかった土地を、ヨーロッパから移住してきた白人たちが次々に『自分たちのもの』にしていったわけだ」

「どうやって?」

「白人たちがやったことは、おおざっぱに言えばこういうことだ。まず、地面や地図に線を引いて『この線の中はオレの土地だ!』と勝手に宣言する」

「ふむふむ。それで?」

「『ここはオレの土地なんだから出て行け!入ってくるな!』と言う」

「横暴ねぇ。インディアンに文句を言われるんじゃないの?」

「そうだね。だから次にやることは、文句を言ってくるインディアンたちを黙らせるということだ」

「どうやって黙らせるの?」

「武力を使っておどすんだけど、まぁ、最終的には殺して黙らせるわけだ」

「ひっど⋯⋯」

「文句を言う人が居なくなれば、晴れてその土地を自分のものに出来たことになる」

「自分のものにっていうか⋯⋯強奪じゃん」

「そうだね。強奪とも言えるし、盗みとも言える」

「盗み?」

「土地はもともと誰のものでもなかった。つまり『誰でもない人=nobody』が土地を所有していたという言い方ができるよね」

「ほう」

「白人たちは『誰でもない人』が所有していた土地を勝手に盗み、自分たちのものにしたというわけだ」

「ふーむ」

「結局、アメリカの土地は全て『誰でもない人』から盗まれた盗品なんだよ」

「なるほど。でもその理屈でいくと、アメリカに限らず世界中の土地が盗品ってことにならない?」

「その通り。全ての土地はもともと『誰でもない人』のものだったわけだからね」

「ふーむ」

「そして、無人島の土地の話で分かったように、土地を私有して地代を搾取することの不当性は土地が売買されても変わらない」

「うーん⋯⋯」

「土地が売買されても、その土地が本質的に盗品であることには変わりがないということだよ」

「そうなのかなー」

 

空気が私有されたら 

「最後に、空気について考えてみよう。もし、地球上の全ての空気がある一人の人間に所有されていたとしたら、どうだろうか」

「なにそれ」

「空気は地球上の全ての人が常に吸ったり吐いたりしてるよね。その空気の使用料を、みんなが毎月その所有者に払わなきゃいけないとしたらどう思う?」

「ふざけんな」

「だよね」

「空気はみんなのものに決まってるでしょう。誰かが私有するなんておかしいわ」

「そうだよね。空気を私有するなんてことは不当なことだし、使用料を取るのは不当な搾取だよね」

「当たり前よ」

「じゃあ、一人の人じゃなくて、一万人ぐらいの人が地球上の空気を分けて所有していたらどうだろう」

「ん?」

「地主ならぬ空気主が一万人いるわけだ。マイが使う空気の持ち主が僕だったとして、僕に使用料を毎月払ってくれる?」

「ふざけんな」

「ダメかな」

「一人でも一万人でも同じよ。空気を私有なんてしちゃダメ!」

「でも、僕は大金を払って他の人から空気を買ったんだよ。きちんと対価を支払ってるんだから、相応のレンタル料を受け取るのは当然の権利じゃないかな」

「その空気を売った人をどんどんさかのぼって行けば、最初に私有した人に行き当たるでしょ。その人は不当に空気を自分のものにしたわけだから、同じことよ。空気の私有、ダメ。絶対!」

「そうだよね。お金を出して買ったのだとしても、空気を私有するなんてことは不当なことだし、使用料を取るのは不当な搾取だよね」

「当たり前よ」

「その当たり前のことが、土地の話になるとどうして当たり前じゃなくなってしまうんだろうね」

「?????」

「人間が生きていくには、空気や土地を使わないわけにはいかないよね。土地を使えなければ寝ることも出来ない」

「そうね。人間に限らず、動物だってそうだわ」

「生きる上で必要不可欠な空気や土地を私有すると、それを持っていない人から搾取できる。分かるね?」

「ふむ」

「空気については、どこからどこまでの空気が誰のものなのか、ということをハッキリさせるのが難しいよね」

「うん」

「それに、自分が所有する空気を使ったのが誰なのかを特定して使用料を請求するのも難しい」

「そうね」

「さらに、空気の使用料を払わなかった人を自分の空気から追い出して勝手に使えないようにすることも難しい」

「ふむ」

「これらのことは、土地の場合なら出来るんだよ」

「うーむ⋯⋯。たしかに⋯⋯」

「つまり、土地は搾取をするためのネタとして選ばれたけど、空気は搾取のネタとして不都合だから選ばれなかっただけなんじゃないかと思うんだよね」

「なるほど⋯⋯。土地は搾取のためのネタで、地代を取ることは不当な搾取だってわけね⋯⋯」

「そういうこと」

「うーむ⋯⋯」

 

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