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経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

銀行は数字を打ち込むだけで給料を払える?

前々回、銀行にとってのキャッシュは日銀が作ったお金、つまり日銀券と日銀当座預金だという話をしたよね」

「うん」

「そして前回は、銀行が預金に対して利息を払ってもキャッシュは減らないという話をした」

「そうね。とりあえず、利息を払った瞬間にはキャッシュアウトにならないってことは分かったわ」

「今回は、銀行が従業員に払う給料のことを考えてみよう」

「ふむ」

「銀行が給料を支払う時は、銀行の預金口座への振り込みで払うよね。つまり、銀行のコンピュータと預金通帳に数字を書き込むだけで給料を払える。だからキャッシュアウトにならない」

「うーん……。でも、給料をもらった人は現金を引き出したりして使うでしょ。その時キャッシュアウトになるんじゃないの?」

「その通り。給料を払った後のキャッシュの増減については、後で考えよう。とりあえず、給料を払った瞬間にはキャッシュアウトにならないよね」

「うーん……。給料を振り込む口座が、その銀行にある口座ならそうかも知れないけど、他行に作った口座だったら、払った瞬間にキャッシュアウトになるんじゃない?」

「それもその通り。だけど事実上、銀行員は勤めてる銀行に作った口座で給料を受け取ることになってるんだ」

「そうなの?希望すれば他行の口座で受け取ることも出来るんじゃない?」

「どうしても、と言って希望すれば出来るかもね。でも、普通の神経をしてたらそんなことは言えないよね」

「あー……。みずほ銀行に勤めてるのに、『どうしても三井住友銀行の口座で受け取りたいんです』なんて、言えるわけないか」

「そうでしょ。そんなこと言う銀行員がいたら、ちょっとアタマおかしいよね。結局、銀行の給与は自行の口座への振り込みで支払われる。この瞬間、キャッシュアウトは無い。いいかな?」

「うん」

「では、払った後のことを考えよう。話を簡単にするため、この国には銀行は10行しかないとする。A銀行、B銀行、C銀行からJ銀行までだ」

「ふむ」

「これらの銀行はどれも同じくらいの規模だとするよ。行員の数や、口座の数もね」

「ふむふむ」

「今、A銀行で給料を預金通貨で合計10億円払ったとする。受け取った行員が給料を全部使ったとすると、キャッシュはどう動くだろうか」

「そんなこと、分かんないわよ」

「うん、分かんないけどね。たくさんの行員が色々なことにお金を使えば、だいたい均等に移動するんじゃないか、ということは言えそうじゃない?」

「均等に移動って?」

「A銀行自身の口座への振り込みが1億円、これはキャッシュアウトにならないんだけどね。それに、B銀行~J銀行の口座への振り込みがそれぞれ1億円ずつ、という具合だ」

「ふむふむ」

「そうなったとすると、合計10億円分の預金通貨が10行に均等に移動したことになるでしょ」

「うーん、現金で引き出される分もあるんじゃないの?」

「そうだね。今、世の中に現金通貨は飽和していると仮定しよう」

「ホーワ?」

「世の中、つまり銀行の外の世界が必要としている量の現金通貨が、世の中に流通していて、時間が経過してもその量があまり変わらない、ほぼ一定だと言える状況を『現金通貨が飽和している』と呼ぶことにする」

「ほう」

「現金通貨の量がほぼ一定ということは、ある期間で銀行から引き出された現金の量と、銀行に預け入れられた現金の量が、ほぼ同じだということだよね」

「そうね」

「誰かが銀行から10万円を引き出したら、一方で誰かが10万円を銀行に預け入れている」

「ふむ」

「例えば、僕がA銀行から10万円を引き出して、君にお小遣いとしてあげたとしよう。そうしたら、君は明日か明後日にでもB銀行の自分の口座に預け入れるだろう」

「10万円くれるの?ちょうだい!」

「例えばの話だよ。この場合、A銀行の僕の口座からB銀行の君の口座に10万円を振り込んだのと同じことだよね」

「なんで10万円もくれるの?エッチなことしようとしてるの?」

「10万円はあげないし、変なこともしないよ。とにかく、現金通貨が飽和している状況なら、キャッシュの動きを追うには、銀行間の動きだけを見れば十分なことが分かるかな」

「でも、私が10万円もらったら、すぐに使っちゃうわよ」

「そうしたら、お金を受け取ったお店が、売上金として銀行に預け入れるでしょ」

「ああ、そうか。それも含めて、銀行間の移動と見なせるわけね」

「そういうこと。長くなったけど、銀行のキャッシュの動きを考える時、現金通貨が飽和していると仮定すると、現金の引き出しや預け入れは考えなくてもいい」

「ふむ。結局のところ、A銀行が給料を10億円払うと、B~J銀行の9行に1億円ずつ、合計9億円のキャッシュアウトになるわけか」

「そうだね。でも、話はこれで終わらないよ」

「まだ何かあるの?」

「良く考えて。B銀行は何もしてないのに、A銀行が給料を払っただけで、1億円のキャッシュインがあったんだよ」

「そうね」

「と言うことは、C銀行が給料を払えばやっぱりB銀行にキャッシュインがあるし、他の銀行が給料を払った時も同様にB銀行にキャッシュインがあるよね」

「確かに」

「これは当然、A銀行にも言えることだよね。B銀行~J銀行が給料を払えば、それぞれA銀行にキャッシュインがあるはずだ」

「そうね」

「A銀行の給料支払いで発生するキャッシュアウトだけ見て、他の銀行の給料支払いで発生するキャッシュインを見ないのは、片手落ちじゃない?」

「確かに……。10行の銀行は同じくらいの規模で、従業員数も同じぐらいと仮定したんだから、給料も同じぐらいよね」

「そうだね。他の銀行もそれぞれ給料として10億円を預金通貨で支払って、受け取った行員が全額を使って、同じように均等に移動したとすれば、A銀行には他の9行から1億円ずつ、合計9億円のキャッシュインがあることになる」

「A銀行自身の給料支払いで9億円のキャッシュアウト、他の9行の給料支払いで9億円のキャッシュイン。合わせると、±0ってことか……」

「もちろん、実際には支払われた給料がどう動いたかなんて追えないし、全部追えたとしても、ぴったり±0になるわけでもない。キャッシュアウトの方が多いかも知れないし、キャッシュインの方が多いかも知れない。平均すれば±0だろうってことだ」

「結局、銀行が給料を払ってもその瞬間は全くキャッシュアウトにならないし、銀行員が給料を使っても、平均的にはキャッシュアウトにならないし、それどころかキャッシュインになる場合もあるってことか……」

「そういうこと。銀行は、支払った給料が使われるところまで含めて考えても、ただ数字を打ち込むだけで、現金を減らさずに給料を払えるということになる」

「うーん、不思議な話ね……」