経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

ペーパーマネーを考える

今回の記事では、色々なペーパーマネーについて考えます。
ここでペーパーマネーと言っているのは、私が以前書いた「実質価値・仮想価値」という記事で「仮想価値」と呼んでいたものと同義です。
すなわち、紙に何かを書いたり印刷したりして、何かを約束することで作られた価値のことです。
ペーパーマネーについて考えること、特に「何を約束しているのか?」を考えることは、お金の本質を考えることにつながります。
もしかしたら、お金儲けのヒントが見つかるかも知れません。

肩たたき券

ペーパーマネーは子供でも作ることが出来ます。
肩たたき券(あるいはお手伝い券など)というペーパーマネーは、多くの人が人生で最初に作ったペーパーマネーかも知れません。
子供が肩たたき券を発行する時に何を約束しているかと言うと、要求された時に肩たたきをすることですね。
肩たたき券を貰ったお父さんやお母さんは、発行者である子供に券を渡して肩たたきをしてもらうことになります。
何枚かは使わずに取っておく人も居るでしょう。

商品券

商品券には色々なデパートで使える共通券もありますが、ここではある1つのデパートだけで使える商品券を考えます。
商品券の発行者は、もちろんそのデパートですね。
何を約束しているかと言うと、要求された時に商品券と引き替えにデパートの希望の商品を渡すことです。
商品券はその多くが使用されて商品と交換されますが、タンスにしまわれたまま使われない商品券もありますよね。
商品券が使われないと、その分デパートが得をすることになります。
本来、商品券を売って得たお金は預り金として計上し、売上げにも利益にもしません。
しかし、もしどの程度の割合で使われないかがデータ等から分かっている(たとえば5%は使われないなど)場合には、商品券を発行して売った時にその使われない分を利益として計上してしまうこともあります。
なんらかの要因で利用率が低く抑えられれば、発行者の利益も膨らみますね。

(例:アニメとのコラボにより発行した商品券それ自体がコレクターズアイテムとして認識された場合など)

割引券

マクドナルドのクーポン券のような、割引券もペーパーマネーの一種です。
ほとんどの場合、割引券はタダで配られますね。
割引券を発行するのはマクドナルドなどのお店であり、発行時に約束していることは、要求された時に希望の商品を割引価格で売ることです。
このペーパーマネーの場合、使われなくてもお店側は別に得はしません(損もしません)。
お客さんにお店に来てもらうことが目的ですから、使ってもらった方が嬉しいペーパーマネーです。

舞台のチケット

舞台やコンサートのチケットもペーパーマネーと言えます。
チケットを発行しているのは興行主であり、発行者が約束していることは、決められた日時・場所にチケットを持ってきた人に舞台やコンサートを見せることです。
このペーパーマネーは、持っている人が使わなかった場合には舞台を見る権利を失ってしまうため、単純に損をしてしまいます。
一方、興業主の方はチケットが使われなくても別に得はしませんね。

債務証書

債務証書は、言い換えれば借金の証文のことです。
これはお金を借りる人が発行したペーパーマネーだと言えます。
約束していることは、決められた期日までに元金と利息を渡す(返済する)ことですね。
このペーパーマネーについては、使われない(返済を求めない)ことはほとんどありません。
もし使われなかったとすれば、それは債務が免除された(返さなくていいと言われた)ということであり、借り手側が得をすることになります。

株券

今ではほとんど電子化されてしまいましたが、株券もペーパーマネーの一種です。
発行者はもちろん、株によって資金を調達した企業です(証券会社は発行者である企業に代わって発行の事務手続きをします)。
発行者が何を約束しているかと言うと、株券を持っている人(株主)に対して企業活動で得た利益から配当金を払うということですね。
債務証書とは違い、「投資したお金を返せ」とは言われないところが発行者側としては嬉しいところです。
株券を持っている人(株主)からすると、発行した企業に対して換金を求めることは出来ませんが、その代わりに市場などで他の人に転売することが出来ます。
このペーパーマネーについても、多くの場合は権利が行使されます(配当金の受け取り手続きがなされます)。

兌換紙幣

兌換(だかん)紙幣というのは、金本位制の時代の紙幣で、金(ゴールド)と交換できる紙幣のことです。
発行者は銀行(発券銀行)ですね。
約束しているのは、要求された時にあらかじめ決められた量の金と交換することです。
兌換紙幣はゴールドと交換しなくてもそのままお金として使えますから、権利はあまり行使されません。
あまり権利が行使されないことが分かっていますから、持っているゴールドの量を超えて兌換紙幣を発行することも可能です。(法律が許せば、ですが)

日本銀行

私たちの財布の中に入っている一万円札や千円札は日本銀行券(日銀券)と呼ばれる紙幣であり、これもペーパーマネーです。
日銀券の発行者はもちろん日本銀行ですが、日銀券を日銀に持っていっても金(ゴールド)などと交換はしてもらえません。
日銀は日銀券の発行時に何を約束しているかというと、特に何も約束はしていないのです。
ペーパーマネーの発行者がしている約束、つまり発行者が負う債務のことを発行者債務と呼ぶことにすれば、日銀券は発行者債務のないペーパーマネーなのです。
発行者債務が無いため、日銀券の保有者はそもそも権利を行使することが出来ません。
ただ、お金として使用できることが政府によって保証されていますから、日本国内で他者からモノやサービスを買うことが出来ます。
お金でモノやサービスを買うという行為は、ペーパーマネーの権利を行使しているのではなく、ペーパーマネーを押しつけ合っていると言った方が本質に近いでしょう。

預金(預金通貨)

預金と言うと、預金者が銀行に預けた“現金”のことをイメージする人が多いと思いますが、ここで言う預金とは、銀行の帳簿と預金通帳に記載された“数字”のことです。
定期預金をした時に発行される預金証書をイメージすると分かりやすいのですが、預金は銀行が作ったペーパーマネーです。

預金というペーパーマネーを発行した時に銀行が約束していることは、引き出しを求められた時に日銀券を渡すことですね。
銀行がお金を貸す時には、銀行の帳簿や預金通帳に数字を書き込んで、預金というペーパーマネーを作って貸しています。
つまり、お金を借りる人が作った債務証書というペーパーマネーと、銀行が作った預金というペーパーマネーを交換しているのです。

これを聞いて、貴方は次のように思うかも知れません。
「預金が銀行が作ったペーパーマネーだとしても、引き出されたら現金を渡さなければならないのだから、現金を貸しているのと同じだろう」と。
それはその通り。
預金を持っている人みんなが権利を行使して日銀券を引き出せば、ペーパーマネーを作った意味は無く、現金を貸しているのと同じです。

しかし、権利がどれぐらい行使されるのかが問題です。
預金というペーパーマネーの権利が行使される割合は95%ぐらいでしょうか?それとも90%?
いいえ、もっとずっと低い割合でしか行使されません。
正確に言うと、日々権利は行使されていく(預金が現金として引き出されていく)のですが、権利行使と逆のこと、すなわち現金の権利化(預け入れて預金にすること)もまた、日々行われているため、権利行使の割合が100%に近づいていかないのです。

具体的な数値は、マネーストックを何で見るかで変わってきますが、M1で見ても約14%、定期預金などを含めたM3で見た場合はほんの7%程度です。(2015年10月現在)
繰り返しますが、この数字は100%に近づいていくのではなく、この程度で安定しているのです。

つまり、預金というペーパーマネーは兌換紙幣と同様に「あまり権利行使されない」ペーパーマネーです。

「あまり権利行使されない」ことがあらかじめ分かっているため、銀行は持っている日銀券の量をはるかに超えて預金というペーパーマネーを作ることができるというわけです。

銀行が預金として作り出したペーパーマネーの大部分は、権利が行使されずにそのままお金として流通しています。

つまり、銀行の帳簿や通帳に書かれた単なる数字がお金として流通しているということです。