経済学を疑え!

お金とは一体何なのか?学校で教えられる経済学にウソは無いのか?真実をとことん追求するブログです。

日銀券はいつ発行されるのか

「今日は、日銀券が発行されるのはいつなのかという話をしよう」

「ふーん。紙に諭吉さんを印刷して、裁断したら発行したってことじゃないの?」

「そうじゃないんだ。印刷しただけの日銀券は、扱いとしては紙切れの束にすぎない」

「ふーん。じゃあいつ発行するの?」

日銀のサイトではどう説明されているか見てみよう」

日本銀行法では、日本銀行は、銀行券を発行すると定めています。銀行券は、独立行政法人国立印刷局によって製造され、日本銀行が製造費用を支払って引き取ります。そして、日本銀行の取引先金融機関が日本銀行に保有している当座預金を引き出し、銀行券を受け取ることによって、世の中に送り出されます。この時点で、銀行券が発行されたことになります。

「銀行が当座預金を引き出した時に、銀行券が発行されたことになる。。。なんかハッキリしない物言いねぇ」

「確かにね。一方で、経済学の教科書などでは『日銀が資産を購入する際に日銀券が発行される』という風に説明されていることもある」

「日銀が国債とかの資産を買い入れる時に日銀券を発行して、それで支払うってことね。これは分かりやすいわ」

「そうだね。説明としてはこっちの方が分かりやすいね」

「でも正しくはないってこと?」

「うーん、まぁ、全くの間違いではないんだけどね。日銀が実際にやってることとはちょっと違う」

「どういうこと?」

「順を追って説明していこう。まず、日銀が日銀券を発行して1兆円分の国債を買う場合、会計上はこんな仕訳を切ることになる」

日銀:国債 1兆円 / 発行銀行券 1兆円 … ①

「意味としては、銀行券の発行残高を1兆円分増やし、国債を1兆円分買ったということになる」

「ふむふむ」

「実はこの仕訳には、現金が出てこない」

「えっ?発行銀行券って現金じゃないの?」

「現金じゃないよ。発行銀行券というのは、銀行券をどれだけ発行したかという残高であって、単なる数字にすぎないんだ」

「ただの発行残高かぁ。じゃあ現金はどうなってるの?」

国債を売った民間の銀行の仕訳から考えていこう。銀行は国債を売って現金を手に入れたのだから、こんな仕訳になるはずだ」

銀行:現金 1兆円 / 国債 1兆円

国債が減って、現金が増えるわけね。これは分かるわ」

「うん。で、この取引の相手方である日銀は、普通に考えればこれとは逆の仕訳を切るはずなんだ。つまりこんな仕訳になる」

日銀:国債 1兆円 / 現金 1兆円 … ②

「現金が減って、国債が増えると」

「その通り。この仕訳なら、日銀から銀行に現金が移動することが分かるよね」

「うん。分かりやすい仕訳だけど、さっきの仕訳(①)と違ってるわね」

「そうだね。②の仕訳は、すでに持っている現金を支払って国債を買うという仕訳だ。この仕訳には日銀券の発行という手続きが含まれていない」

「だとすると……?」

「①の仕訳と②の仕訳の差分を取ってみると、こんな仕訳になる」

日銀:現金 1兆円 / 発行銀行券 1兆円 … ③

「そうなの?」

「②の仕訳と③の仕訳を足し合わせると、①の仕訳になるのが分かるかな」

「うーん、左側と右側の両方に現金があるけど…」

「左側の現金は現金が増えること、右側の現金は現金が減ることを表すから…」

「現金が1兆円増えて、1兆円減ると。だからプラスマイナス0で消えるってわけね」

「そうそう」

「確かに、②と③を足すと①の仕訳になるわ」

「うん。この③の仕訳が、純粋な日銀券発行の仕訳なんだ」

「ほほう」

「③の仕訳の意味は、1兆円分の紙切れの束を1兆円の現金にして、日銀券の発行残高を1兆円分増やしたってこと」

「紙切れってつまり、諭吉さんが印刷されてる紙のことでしょ?」

「そうだよ」

「はー。そうすると、諭吉さん印刷済みの紙切れを現金にすることが日銀券の発行ってこと?」

「その通り」

「そうなんだ…!」

「結局、①の仕訳は、日銀券を発行して現金を作り(②)、その現金を支払って国債を買った(③)という2つの取引を1つにまとめた仕訳なんだ」

「なるほどね。でも、これはこれで正しい仕訳なんじゃないの?」

「うん、現金を実際に銀行側に動かしてるならね」

「と言うと、実際には動かしてない?」

「そう。いちいち現金を動かすのは面倒だからね。この現金はそのまま日銀当座預金に預け入れるんだ」

「そうすれば現金を動かさなくて済むのね」

「うん。現金を日銀当座預金に預け入れた時の日銀側の仕訳はこうなる」

日銀:発行銀行券 1兆円 / 当座預金 1兆円 … ④

「ふーん。当座預金が増えて、日銀券の発行残高が減る…」

「そう。この仕訳にも現金が出てきてないよね」

「あっ、本当だ」

「この仕訳も、2つの仕訳を足し合わせたものなんだ」

日銀:現金 1兆円 / 当座預金 1兆円 … ⑤

日銀:発行銀行券 1兆円 / 現金 1兆円 … ⑥

「この⑤と⑥の仕訳を足し合わせたものが④の仕訳になる」

「ふむ、これも現金を左右から打ち消せば④の仕訳になるわね」

「うん。⑤の仕訳の意味は、現金1兆円を預かって、当座預金の数字を1兆円分増やしたってこと」

「ふむふむ」

「この時、現金が銀行から日銀に動くことが分かるよね」

「そうね」

「⑥の仕訳は③の仕訳と左右が逆になっていて、現金を1兆円分減らして、日銀券の発行残高を1兆円減らしている」

「ふーん。③の仕訳が紙切れを現金にしていて、その逆ってことは……」

「うんうん」

「もしかして、現金を紙切れに戻したってこと?」

「その通り!いいカンしてるね。現金を紙切れに戻して日銀券の発行残高を減らすことを、日銀券の還収と言うんだ」

「そうなんだ…」

「さて、日銀が国債を買う時の仕訳の話だったね。日銀は①の仕訳で日銀券を発行して国債を買い、現金を銀行に渡す。その後すぐに、その現金を④の仕訳で当座預金に預かると同時に日銀券を還収する」

「ふむふむ」

「細かく説明するなら、③の仕訳で日銀券を発行して、②の仕訳で国債を買って現金を銀行に渡す。その後すぐに、⑤の仕訳で現金を預かって当座預金にし、⑥の仕訳で日銀券を還収する」

「ははぁ。何が言いたいのか分かったわ。日銀券を発行した直後にすぐ還収してるってことね」

「そうそう。紙切れから現金にしたものを、すぐに紙切れに戻している。結局トータルでは、日銀券は発行していないのと同じだ」

「なるほどね。でも、日銀券を発行していないのだとしたら、何で国債を買ってるの?」

「それは、①の仕訳と④の仕訳を足し合わせてみれば分かるよ」

「うーん、左右の両方に発行銀行券があるから、これは打ち消せる?」

「そうそう」

「だとしたら、足すとこうなるわね」

日銀:国債 1兆円 / 当座預金 1兆円 … ⑦

「大正解!」

国債を買って、当座預金が1兆円増える……?よく意味が分からないんだけど」

「当座預金というのは単なる数字だから、その数字を単純に1兆円増やすってことだよ」

「数字を増やすだけで国債を買えるってこと?それって変じゃない?」

「何も変じゃないよ。銀行にとって、日銀に1兆円の当座預金があるということは、いつでも1兆円の現金を引き出せる権利を持ってるってことだよね」

「そうね」

「つまり日銀は、国債を買った代金として現金を渡す代わりに、現金を引き出せる権利を渡したってことだよ。変じゃないでしょ?」

「そうかー。当座預金の数字を増やすってことは、現金を引き出せる権利を増やすってことなのかぁ」

「そうそう」

「結局、日銀が国債を買う時には日銀券は発行されないってことね」

「そう」

「じゃあいつ発行されるの?」

「さっき説明したように、銀行が現金を日銀の当座預金に預け入れた時、日銀券が還収される。と言うことは逆に…?」

「……銀行が当座預金から現金を引き出した時に、日銀券が発行される?」

「正解!当座預金から1兆円を引き出した場合の仕訳はこうだ」

日銀:当座預金 1兆円 / 発行銀行券 1兆円 … ⑧

「この仕訳も、現金が出てこないわね」

「そう。これも2つの仕訳を足し合わせたものだよ。分かるかな?」

「預け入れの逆と考えると……こうなるかな」

日銀:現金 1兆円 / 発行銀行券 1兆円 … ⑨

日銀:当座預金 1兆円 / 現金 1兆円 … ⑩

「その通り!」

「⑨の仕訳で日銀券を発行して、⑩の仕訳で当座預金の数字を減らして現金を渡してるわけね」

「そうそう。これで、日銀のサイトが『当座預金が引き出された時に銀行券が発行されたことになる』と説明している理由が分かったでしょ?」

「当座預金から現金を引き出した時に、同時に発行されてるからなのね。よく分かったわ」