物々交換補助カードのお話
「ねぇ」
「なに?」
「君が持ってるそのMacBook Airと、僕のこの電卓を交換しようよ」
「イヤよ!」
「なんで?どっちも計算機だよ?(笑)」
「バカ言わないで!価値が全然釣り合ってないじゃない!」
「うん、そうだよね。交換するモノの価値が釣り合わないと、物々交換は出来ないね」
「当たり前でしょ」
「昔の人は物々交換してたって言うけど、価値が釣り合わない時はどうしてたんだろうね」
「さぁねぇ……。足りない方が別の何かを足して、バランスを取ったとか?」
「そうだね。もし、足すものが何も無かったら?」
「うーん、足りない分はまた今度渡しますって約束して、とりあえずその場では交換してもらう……かな」
「うん。それで信用してもらえるかな」
「信用してもらえないなら、紙に書いてサインでもするわ」
「いいね。でもいちいち紙に書くのも面倒だよね」
「そうね……」
「昔むかしの話。カドノ村という村で人々が物々交換をしながら暮らしていた」
「ふーん(なんか始まった…)」
「この村の村長が頭のいい人で、この問題の解決に取り組んだんだ」
「へぇ。どんな風に?」
「物々交換で価値が釣り合わない時、足りない方が足して渡すためのカードを作ったんだよ」
「カード?」
「このカードには1とか5とかの数字が書いてある」
「ふむ」
「例えば、Aさんの皿とBさんのかごを交換するケースを考えよう。皿の価値が2、かごの価値が3とした場合、Aさんは皿と一緒に1と書かれたカードを渡すんだ」
「なるほど。足りない分のモノを今度渡すという約束の代わりに、カードを渡すわけね」
「その通り」
「紙に書かなくていい分、ちょっとは楽になるわね」
「もっといいことがある。1のカードを受け取ったBさんは、後日Aさんにモノを請求してもいいんだけど、別の人との交換の時に使ってもいいんだ」
「なるほど。それは便利かもね」
「さらにいいことがある。モノとモノを交換しなくても、カードだけでモノと交換ができるんだ」
「どういうこと?」
「価値2の皿が欲しければ、1のカードを2枚渡して皿を受け取ればいいだろう」
「ああ、それはそうね」
「相手の皿が欲しいけど、相手は自分のかごが欲しくないという場合、物々交換は成立しないけど、このカードはその問題も解決してるんだ」
「おー。村長、天才ね」
「このカードは物々交換補助カードという。略して交換カードと呼ぶことにしよう」
「へぇ……。ねぇ、交換カードってほとんどお金と同じじゃない?」
「その通り。カドノ村で交換カードはお金として流通している」
「村長がお金を作っちゃったってわけね」
「そういうこと。この交換カードの話から分かる、とても重要なことが4つある」
「何?」
「第1に、お金それ自体には価値が無いということ」
「ああ、交換カードはただの紙だもんね」
「第2に、国民の代表である政府はお金を作る権限をもともと持っているということ」
「うん、村民のために村長がお金を作るのは問題ないよね」
「第3に、政府がお金を作って国民に配っても問題ないということ」
「ふむ。交換を便利にする道具を作って提供してるだけだもんね」
「第4に、政府がお金を作った場合、利子を取る必要がないこと」
「うーん、仮に利子を取ったとしても村のものになるし、村民に還元したら同じことよね」
「その通り!急にものわかりが良くなったね」
「なんでだろ(笑)」
「これで、現代の管理通貨制度の問題点が浮き彫りになったよね?」
「そうなの?」
「そうだよ。良く考えてごらん」